研究課題/領域番号 |
26461651
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
小林 健一 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 産業毒性・生体影響研究グループ, 主任研究員 (00332396)
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研究分担者 |
久保田 久代 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 産業毒性・生体影響研究グループ, 上席研究員 (90333377)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DOHaD / 低体重 / 甲状腺機能低下 / catch-up growth |
研究実績の概要 |
胎児期・出生後早期における発育不全が、成熟期以降に非感染性疾患(non-communicable diseases;NCD)の発症に深く関与していることが明確になってきている。これまで胎児期の低栄養環境における低出生体重児の追いつき成長(catch-up growth)がもたらす成熟期以降の生活習慣病発症に関する知見を中心として、その証拠が集積しつつある。本研究課題では、胎児期から新生児期より開始される内分泌機能低下に起因した児の低体重が成熟期以降にcatch-upを示す場合の生活習慣病や生殖機能異常等が生じるリスクとその機序解明を目指している。とりわけ先天性甲状腺機能低下症に起因する周産期以降の成長抑制が、キャッチアップ 後に起こりうる疾患発症のリスクに着目をしている。本実験では表現型が安定的な出生後早期から発育抑制を呈する自然発症先天性甲状腺機能低下症のモデルマウスを用いて、若齢期および成熟期以降にかけての成長推移(体重、体長、尾長およびBMI)を測定し、代謝系臓器(肝臓、腎臓)、脂肪(後腹膜・腎周囲・精巣上体周囲・腰部・鼠径部)および生殖系臓器(精巣・精巣上体)の発達を経齢的に調べた。若齢期の甲状腺機能低下症マウスでは成長指標および代謝系臓器のすべての項目は、正常型と比べ有意に低値であった。体重、体長および尾長の発育遅延は経齢にともない改善がみられたが、老齢期においても腎臓、脂肪は正常個体と比較して小型のままであった。以上の結果から、周産期以降の甲状腺機能低下に伴う成長抑制は、腎や脂肪の発達には不可逆的な影響を与えると考えられた。現在、薬剤を用いた甲状腺機能低下モデル動物についてどのような現象が見られるかについて検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎児期から生後の内分泌不全による成長抑制は、成熟時にキャッチアップしても腎の小型化等による高血圧のリスクを予期できるという予想通りの結果が得られてきている。しかし、脂肪増加がキャッチアップの原因であるという当初の予想に反して、有意に低いままであるという非常に興味深い結果を得た。得られた結果をもとに学会発表を増やすことができた。成熟期以降の経齢変化に対する更なる影響の検討も必要であると考えたことから新たな指標を追加して検索する必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
甲状腺機能低下症の変異モデルを用いた検索では、概ね表現型の傾向が把握できた。特に不可逆的で重篤な影響が発症し、解析を優先的に進めるべく臓器が見いだせた。追加の実験として、新たな関連遺伝子発現を定量PCRにて測定し、より詳細な機序解明をしていく予定である。また、薬剤を用いた実験的甲状腺機能低下症モデルについても解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
胎児期から生後の内分泌不全による成長抑制は、脂肪増加がキャッチアップの原因であるという当初の予想に反して、有意に低いままであったという結果を得た。その理由を解明するため、新たな指標に着目し、さらなる検討が必要であると考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生化学・組織学・生理学等の多面的な解析により実験を継続し、学会発表や論文作成を行っていくための費用に当てる予定である。
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