メレダ病は常染色体性劣性の掌蹠角化症であり、その原因遺伝子がSLURP1遺伝子であることが明らかにされている。この遺伝子産物であるSLURP1は、ほぼ全身の細胞で産生され、細胞外に分泌されるため、血清、尿、汗などに検出される。SLURP1は、その構造解析や生化学的実験によってニコチン型アセチルコリン(nACh)受容体に結合するリガンドと考えられているが、なぜSLURP1の欠損から掌蹠角化が生じるのかは解明されていない。本研究は、SLURP1の欠損により表皮細胞の過度な角化に至る機序を明らかにすること、ならびに合成SLURP1を用いた蛋白補充療法の可能性を検討することである。本年度は、1)合成SLURP1作成のニコチン性アセチルコリン受容体への結合実験を行い、現在までのニコチン性アセチルコリン受容体リガンドのデータベースやコンピューターソフトによる予想から、受容体への結合を強める、あるいはシグナルを高めるアミノ酸の同定を行い、その結果より、数個の改良型SLURP1の合成を委託した。得られた合成SLURP1の表皮細胞をα7型アセチルコリン受容体への結合を標識ブンガロトキシンの結合阻害を基に測定し、うまく働く合成SLURP1を選択した。 2)改良型合成SLURP1の細胞や組織での効果判定を行った。培養メレダ病表皮細胞を培養し、合成SLURP1を投与して、遺伝子発現の回復を確認。次に、3次元構築して無免疫ラットに移植した3次元皮膚にて合成SLURP1を外用、あるいは全身投与でその効果を観察した。
|