研究実績の概要 |
DNA修復機構は細菌からヒトまで保存されている重要な生命機構である。DNA mismatch repair (MMR)はミスマッチ認識、エラー鎖切断、断片鎖除去、DNA修復合成と進行するが、ヒトではミスマッチ認識に必要な7種の酵素(MSH2, MSH3, MSH6, PMS1, PMS2, MLH1, MLH3)が存在する。PMS1, PMS2, MLH1に対する自己抗体が2001年に海外から筋炎特異的抗体として報告され、2005年には我が国からMSH2とPMS1に対する抗体が膵癌患者と筋炎患者で報告されたが、その後の報告に乏しい。本研究では筋炎を中心に各種膠原病患者における7種の酵素に対する自己抗体の存在を調べ、臨床的意義について検討した。 皮膚筋炎(DM)160例、多発性筋炎(PM)57例、筋炎オーバーラップ症候群(OS)22例、全身性エリテマトーデス(SLE)40例、強皮症(SSc)20例、シェーグレン症候群20例、関節リウマチ20例を対象とした。7種酵素のcDNAを用いたリコンビナント蛋白によるELISA、免疫沈降法(IP)によりスクリーニングを行い、IP-ウエスタンにより抗体の確認を行った。 9例のDM、3例のPM、3例のOS、3例のSLEにMLH1(12例)、PMS1(11例)、 MSH2(4例)、PMS2(2例)に対する抗体を同定した。これら18例のうち8例は2種以上の抗体が共存した。また13例はDM/PMやSLE、SScにおける疾患マーカー抗体が併存したが、5例のMMR酵素抗体単独陽性例は筋炎関連疾患に限られた。 MMR酵素に対する自己抗体の頻度は酵素間で異なることが示された。MMR酵素に対する自己抗体は筋炎特異的抗体とはいえないが、筋炎関連抗体として同定することは臨床上も重要であると思われた。
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