研究課題
本研究は、病変の誘導が可能な、炎症性皮膚疾患のモデルマウスを用いて、ヒストン修飾等のクロマチン修飾が病変の形成に果たす役割を検討する事を目的としている。昨年度までにイミキモド塗布による乾癬病態のモデルマウスを作成し、エピジェネティックな作用を持つ化合物が、皮膚病変に及ぼす効果を検討した。これにより病態形成を促進する化合物を特定したため、本年度はその分子的なメカニズムをさらに検討する為、類似の効果をもつ化合物、及び、他にもヒストン修飾に作用する化合物を複数検討した。具体的には、バルプロ酸、フェニルブチレート、トラニルシプロミン・ヘミサルフェート、C646、ガルシノール、HPA、HDAC Inhibitor XIX、GSK-J4、BIX-01294、CTPB、EX-527のそれぞれの化合物を腹腔内投与した上で、イミキモド誘導下に置ける皮膚病変形成への効果について検討した。一剤を除いて、人の尋常性乾癬のPASIスコアに準じたスコアリングシステムによって変化を定量化し、有為差を得られなかった。このうち、有為な結果を得た一剤に置いて組織学的変化を検討し、また、ロリクリン, インボルクリン, フィラグリン, ABCA12, 分化マーカー、CCL20, Il-6, IL-23, S100A7, TSLP、K16 などの炎症関連遺伝子の発現解析を行った。出来るだけ良い条件でクロマチン免疫沈降等の解析を行う為、最も皮膚病変の変化を起こす条件を求めて、他の薬剤も含めて更なる検討を行ったが、コストと毒性の問題も有り、結果に大きな変化を得られなかった。
3: やや遅れている
本研究を進める中で、ある化合物が病変を修飾する活性を可能性を認めたため、関連の作用を持つ化合物について、検討対象の化合物を増やして検討を行った。再現性のある結果を得られなかった為、条件検討等を行い、時間を要した。
現在迄に得られた結果をもとに、クロマチン免疫沈降を行い、皮膚ケラチノサイトに置けるヒストン修飾の状態を検討する。
複数の化合物で検討したマウスのin vivo実験の結果が再現性が無く、条件設定と再試験を行った為に、想定以上に日数を必要とし、研究計画に遅延を生じた。この為、クロマチン免疫沈降等を行う事を想定した経費について、未使用額が生じた。
現在までに得られた中で、最も優れた乾癬モデルマウスの薬剤投与実験条件において、表皮ケラチノサイトのヒストン修飾の状態について、クロマチン免疫沈降を行い検討を行う予定である。
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JAMA Dermatology
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