研究課題
天疱瘡は抗デスモグレイン抗体により表皮細胞接着が低下し全身に水疱形成を起こす疾患である。われわれはこれまでに,病因抗体と非病因抗体を用いて細胞接着の低下機構を解明してきた。本研究では,プロテオミクス解析結果から候補分子を選定した。病因性抗体を培養表皮細胞に添加後,タンパクレベルで増減を再検討した。関連分子は,細胞骨格タンパク,接着分子,小胞体ストレス関連分子であった。現在,論文作成中である。関連研究課題:現在実用化されている患者血清中の自己抗体検出法は,非病因性抗体も検出するため,異常に抗体価が高くなっても,疾患活動性を反映しない症例が時に経験される。従来法の欠点を改良した,病因性抗体を検出するEDTA-ELISA法を開発し,様々な検討を行った。EDTA-ELISA法は,従来法よりも臨床重症度スコア(pemphigus disease area index)に高い相関を示した。これまでに,患者検体を用いて,自己免疫性水疱症の自己抗体の産生機序を解明する研究は皆無であった。われわれは,重症薬疹の臨床組織像が,腫瘍随伴性天疱瘡と共通していることに着目し,重症薬疹患者血清を用いてデスモソーム構成分子であるプラキンファミリータンパク(PL)に対する自己抗体を検討した。結果,重症薬疹患者では,一定の割合で抗PL抗体が検出され,それは,肝障害に相関を持ち,ステロイド治療を受けた群で検出率が低いことが明らかになった。なぜ健康人が突然自己免疫性水疱症が発症するか不明であったが,薬剤アレルギーやそれに関連するウイルス感染症による組織障害がきっかけで自己免疫が誘導され,自己抗体産生の発症要因となる可能性があると提言することができた。
すべて 2016
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British Journal of Dermatology
巻: 174 ページ: 113-119
巻: 175 ページ: 944-952