研究実績の概要 |
常染色体劣勢皮膚弛緩症1B型は細胞外マトリックスタンパク質であるfibulin-4の変異に起因し、動脈瘤・肺気腫等、弾性線維に富む組織での異常も認められる。これまでに動脈瘤・皮膚弛緩症を主訴とする患者においてfibulin-4の変異が10例ほど報告されている。本研究ではこれらの変異を導入したfibulin-4をリコンビナントタンパク質として発現・精製し、変異による生化学的性状ならびに機能への影響を解析し、病態の発現機序の解明を目的とした。 変異によっては発現しないものもあったが、発現が認められるものについては変異fibulin-4を精製し、それらのプロテアーゼに対する感受性の変化、また、fibulin-4と結合するとされているタンパク質であるエラスチン、fibrillin-1, lysyl oxidase等への親和性の変化、さらに、変異fibulin-4の分泌ならびに細胞外マトリックスへの取り込みの変化について解析してきた。その結果、変異によりプロテアーゼに対する感受性の昂進、さらに、結合性の低下が観察され、それらの一部は変異残基に特異的なものであった。 また、分子力学シミュレーション法を用い、2種の変異による構造変化の解析も行った。どちらの変異もカルシウム結合に関与するとされる残基の変異であったが、カルシウム結合性は失われず、変異タンパク質においては、構造変化が昂進していることがわかった。これらの点に関しては、さらに生化学的解析を進行中である。
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