研究実績の概要 |
水疱性類天疱瘡(BP)発症におけるBP180に対するIgG型自己抗体(BP-IgG)の役割としては、BP-IgGが自己抗原BP180(ヘミデスモソーム構成分子)の細胞質内への取り込みによる、ケラチノサイト接着低下が考えられている(Hiroyasu S, et al. Am J Pathol 2013)。一包、ケラチノサイトの基底面との接着についてはヘミデスモソーム以外にFocal adhesionが担うことも知られている(Ozawa T, et al. J Invest Dermatol 2010)。今回の研究では培養ケラチノサイトにBP-IgGを投与した際のヘミデスモソーム接着の低下に伴うFocal adhesionの代償機構について調べることにあった。結果として、BP-IgG投与にともない、ヘミデスモソーム構成分子発現の低下と反比例してFocal adhesion発現の上昇を認めた。具体的にはfocal adhesionのサイズの増加と運動性の低下を認めた。このことは、過去に血管内皮細胞において見られた、細胞に対する物理的刺激に対するfocal adhesionの代償的抵抗であると考えられた(Tsuruta D, et al. J Cell Sci 2003)。当初の目標の一つであった、BP180の時間経過に伴う発現回復とそれに伴うfocal adhesionの動態については、確証のある結果を得ることはできなかった。また、具体的な接着力の増強については、残念ながら認めることはできなかった。理由としては、ヘミデスモソーム接着おそらくfocal adhesion接着よりは強固なため、focal adhesionによる代償的接着力増強を検出することが困難であるためと考えている。今後は、今回見つかったfocal adhesionによる代償を利用した治療法の開発に務めたい。
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