ヌクレオチド除去修復(NER)を欠損する色素性乾皮症(XP)では進行性の神経症状を発症するが、その発症機序については未だ解明されていない。NERで修復される酸化的DNA損傷がXP神経症状を引き起こすと考えられ、その最有力候補はサイクロプリンである。本研究課題では、我々が新規に樹立したサイクロプリン特異抗体を用いたELISA法により、サイクロプリンがXPの神経症状を引き起こすことの証明を試みた。
野生型およびXP-Aノックアウトマウスを用いて、高月齢のXP-Aマウス臓器中にサイクロプリンが蓄積されているかについて検討した。月齢5、6の低月齢マウスと月齢24~29の高月齢マウスの肝、脳(嗅球+大脳)、腎の計15検体からDNAを抽出し、DNA中のサイクロプリン(5'S-cyclo-dA)数をサイクロプリン特異抗体(CdA-1)を用いたELISA法により定量的に検討した。その結果、野生型およびXP-Aマウス、低月齢および高月齢、臓器の違いにかかわらず、各検体臓器中のサイクロプリン数に有意な差はみられなかった。その原因として、XP-Aマウスは寿命が2年と短く、神経症状発症に必要な量のサイクロプリンが蓄積されないためと推測される。実際にXP-Aマウスでは、XP-A患者と同様に紫外線発癌がみられるが神経症状は自然発症しない。そこで、フェントン反応やグルタチオン合成阻害薬、電子伝達系阻害薬などのサイクロプリン誘発促進処理を用いてXP-Aマウスの脳神経細胞にサイクロプリンを効率的に誘発して神経症状を発症させて、XP-A神経症状モデルマウスとして使用することが考えられる。今後は共同研究者の奈良県立医科大学研究教授・森 俊雄先生が本研究を継続・発展して下さる予定である。
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