研究課題/領域番号 |
26461668
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山西 清文 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10182586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 角化症 / 魚鱗癬 / 掌蹠角化症 / アトピー性皮膚炎 / IL-33 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
皮膚に作用する内的要因、並びに外的侵襲によって表皮角化細胞を傷害されると、角化細胞から複数の警告因子が放出され、炎症・修復反応が誘導されるが、この反応の持続は、皮膚疾患における特定の病態に関わる可能性が示唆される。本研究では、次世代シーケンサーによる包括的ゲノム変異解析によって同定される角化関連分子の変異に応じて、警告因子の発現がもたらす病態の特性と、それによって活性化される遺伝子ネットワークの解明により、角化症の新たな治療標的の開発を目指している。本年度は、研究計画に従い、角化症症例のゲノムベース解析と警告因子の一つであるインターロイキン33(IL-33)の発現について検討した。角化症症例については、魚鱗癬、魚鱗癬症候群、掌蹠角化症、膿疱性乾癬を含め、これまで32症例について122遺伝子の包括的解析を行った。既知の疾患遺伝子の変異同定により診断確定に至った症例は5例であった。警告因子遺伝子についても解析に加えているが、警告因子をコードする遺伝子変異は今回解析した限りでは検出されなかった。これらのゲノムベース解析の結果変異が同定された魚鱗癬紅皮症の症例に対して、IL-33の発現について免疫組織学的に検討した。その結果、魚鱗癬症候群のなかでNetherton症候群の表皮においてIL-33の発現増加を示す結果が得られ、Netherton症候群等、アトピー性皮膚炎と同様にTh2型サイトカインが魚鱗癬病態に関わる場合、表皮のIL-33が増加する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、研究期間内に角化症症例のゲノムベース解析として包括的遺伝子解析のシステムを確立することを目標として掲げており、本年度は次世代シーケンサーを用いて122遺伝子を一括してシーケンスを行い、遺伝子変異を包括的に検出することができ、目標を達成できた。警告因子の一つであるインターロイキン33の発現については免疫組織学的に検討し、Netherton症候群においてIL-33の発現増加を示すことを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、角化症症例を増やして確立した包括的遺伝子解析を継続的に実施する予定である。また、警告因子として、今後IL-33以外にも複数のサイトカインを含めて検討を行い、角化症における病態解明と治療標的となる分子の同定に向けて研究を進めたい。さらに、現有の角化症モデルマウスの皮膚で発現する遺伝子の網羅的解析を新たに実施し、警告因子発現とそれに関連するシグナル伝達系についても、IPA等を駆使して解析を行いたい。
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