研究課題
乾癬や皮膚癌などの皮膚疾患は、表皮バリア機能低下および免疫系異常を伴い脂質代謝の破綻と密接に関連していることが予想されるが、これらの皮膚疾患における脂質ネットワークの役割については充分に理解されていない。申請者は脂質メディエーターの初発酵素の一つである分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)分子群に注目し、この酵素の生理的な意義について研究をおこなっている。これまでに得られた知見を基盤に、本研究ではsPLA2群遺伝子改変マウスをツールに脂質メタボローム解析を展開することで、皮膚疾患に関わる新規脂質メディエーターを探索し、その機能を解明することを目的とする。さらに、これを理論基盤とした創薬および予防治療の可能性を検討し、新たな皮膚疾患バイオマーカーの確立を目指している。昨年度に見いだした表皮肥厚性疾患を制御する新規リゾリン脂質(プロズマロージェン型リゾホスファチジルエタノールアミン)については、本年度、予防治療を目指して特異的抗体の作成をおこなっている。また、本年度は新たにIIE型sPLA2(sPLA2-IIE)が皮膚の毛周期に応じて毛包に発現し、sPLA2-IIE欠損マウスの毛包が組織学的に毛皮質の発育障害が認められること、sPLA2-IIEが不飽和脂肪酸およびリゾホスファチジルエアノールアミン(LPE)を分子種非選択的に遊離することを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
表皮肥厚性疾患を制御する新規リゾリン脂質(プロズマロージェン型リゾホスファチジルエタノールアミン)を発見し、論文発表した(J. Exp. Med.212, 1901-1919, 2015)。また、新たにIIE型sPLA2(sPLA2-IIE)が皮膚の毛周期に応じて毛包に発現し、sPLA2-IIE欠損マウスの毛包が組織学的に毛皮質の発育障害が認められること、sPLA2-IIEが不飽和脂肪酸およびリゾホスファチジルエアノールアミン(LPE)を分子種非選択的に遊離することを見いだし現在論文投稿中である。以上をもって概ね研究計画通りに進展している。
新規リゾリン脂質(プロズマロージェン型リゾホスファチジルエタノールアミン)については、引き続き特異的抗体の作成を進めると共にヒト炎症性皮膚疾患との関連も調べていく。
昨年度の検討から新規生理活性脂質の作用点は、1)特異的受容体の存在、2)膜構造の変化が推定された。そのため培養細胞を用いた更なる検討が必要であることから使用額の変更が生じた。
昨年度から次年度への繰越金については、培養細胞を用いた実験をおこなうための物品費、研究成果発表に伴う参加費および旅費(2016年5月、米国・サンディエゴ)に使用する。また、研究協力者への謝金にも使用する。次年度は1)培養細胞を用いた検討の中で大規模なマイクロアレイ解析および脂質メタボローム解析をおこない新規生理活性脂質の絞り込みを進める。2)新規生理活性脂質の特異的抗体の作成をおこなう。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Biol. Chem.
巻: 291 ページ: 6895-6911
10.1074/jbc.M116.715672
J. Exp. Med.
巻: 212 ページ: 1901-1919
10.1084/jem.20141904
巻: 212 ページ: 1851-1868
10.1084/jem.20150632
http://www.igakuken.or.jp/topics/2015/1005.html