研究課題
平成26年度予定し実施した計画は3つである。1)症例の蓄積とサンプルの追加保存:HPV関連新生物と考えられるボーエン病、ボーエン様丘疹症、疣状癌、その他有棘細胞癌などから生検を行い、DNAおよびRNA採取、凍結サンプルを収集した。2)HPVウイルス型の迅速診断:従来のPCRを用いたHPVのL1領域をPCRで増幅し、シークエンスを行いHPVの型を決定する手法は、PCR増幅エラーや型が多いという点で問題だった。近年開発されたsmartAmp法は、プライマーを5本使用しDNAへの特異性を高め、新規Aac DNA polymeraseは、一定温度で二本鎖 DNAを解離しつつ、新しいDNA鎖を合成することが可能な酵素で、60度で等温増幅が可能となり反応時間も30分と短く、増幅エラーは抑制されるのが最大の特徴である。このsmartAmp法でPVウイスルの有無を確認し、さらにシークエンスを行い、HPVのタイプを決定した。3)HPVの染色体への挿入の判定 HPVは通常エピゾーマルな状態で核に存在するが、癌化などの時は染色体に挿入がおこる。それを検出するのが、amplification of papillomavirus oncogenic transcript (APOT) assayである。これは、染色体への挿入がおこるとHPVの遺伝子の決失がおき、またヒトの染色体の配列もmRNAの中に組み込まれる。その結果、HPVのmRNAをcDNA に逆転写しPCRで増幅すると、エピゾーマルのタイプに比較して短くなり、シークエンスを行うとヒトの配列も読め、HPVの染色体挿入部位もわかる、という原理である。サンプルからmRNAを採取し、cDNAを合成、HPV特異的プライマーにて増幅しサイズと挿入部位を確認する。特にボーエン病、ボーエン様丘疹症では、変異と、臨床、組織、経過を比較し、解析中である。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度に予定したいた3つの計画、すなわち1)症例の蓄積とサンプルの追加保存、2)HPVウイルス型の迅速診断、3)HPVの染色体への挿入の判定、に関しておおむね予定していた内容で実行できており、結果も出てきている。ゆえにおおむね順調に進展していると自己判定している。
平成26年度に施行した1)症例の蓄積とサンプルの追加保存、2)HPVウイルス型の迅速診断、3)HPVの染色体への挿入の判定に関しては引き続き症例数の上乗せ、結果の解析を行っていく。さらに今後以下の内容を遂行すべく推進していく。1)病変の癌関連遺伝子の網羅的検索 近年、パーソナル型次世代シークエンサーが臨床の領域でも使用が可能になり、当大学でも導入されている。今回、次世代シークエンサーイルミナmiSEQを用い、TruSeq Amplicon Cancer Panelにて癌関連遺伝子を増幅し変異を検索する。この方法により、多くの癌関連遺伝子について検索が可能となる予定である。2)HPVのメチル化の測定 HPVのL1遺伝子とthe long control region領域についてバイスルファイトシークエンスを行う。DNAをバイスルファイト処理すると、非メチル化シトシンはウラシルに変化するがメチル化シトシンは変換されない。その違いをメチル化部位と有無で分かる。サンプルからDNAを採取、重亜硫酸ナトリウム処理し、通常のPCRを行い、その後シークエンスを行う。バイスルファイト処理をしたもの、しないものの塩基配列を比較して、メチル化の部位を同定。メチル化の有無と、臨床症状・組織・経過との相関性を解析する。6)難治性良性病変でのHPVの染色体への挿入 HPVの染色体癌化には、高リスク型のE6とE7が関与し、高リスク型のE6はp53蛋白に、E7蛋白はRB蛋白に強力に結合して、それらの蛋白を分解してしまう。しかし、低リスク型のE6やE7はその活性は弱い。今回、難治性の良性の疣贅などで、低リスク型のHPVが染色体に挿入され、病変が持続されるのではないかと考えた。良性の疣贅などについても、DNAや凍結サンプルを保存し、特に難治性のものについて染色体への挿入についてAPOT法を行う予定である。
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