研究課題
栄養障害型表皮水疱症は、VII型コラーゲンがないため一生涯水疱が生じる遺伝性疾患である。本研究の目的は、患者由来の細胞を使い外力に強い人工的な真皮・脂肪組織を再構築する新規治療法を確立することである。頭皮など有毛部位が重症化しないのは、表皮下に存在する豊富な細胞外マトリックスと脂肪組織が外力分散に重要な役割を果たしているからである。有毛部位に豊富にある毛包周囲線維芽細胞、多分化能を有しアディポカイン・サイトカインを産生する脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた真皮―脂肪組織の再構築は、手足の水疱形成を抑制し瘢痕の予防になると考える。患者本人の細胞であり、拒絶反応もなく安全に行える治療である。現時点での研究成果は下記の通りである。Ⅰ.脂肪組織由来間葉系幹細胞の採取、機能解析① C57BL/6マウス鼠径より脂肪を採取、コラゲナーゼ処理後細胞を回収、培養した。② FCM・ソーティングでCD31、CD45陰性、CD90、CD105、Sca1陽性の細胞を回収、脂肪組織由来間葉系幹細胞として培養した。③ 脂肪細胞誘導培地に切り替え、脂肪細胞への分化能があるか確認した。④ 培養中の培養液を用い、サイトカイン・アディポカイン産生をELISA解析した。Ⅱ.VII型コラーゲンKOマウス皮膚の移植① 生後1日のGFP(+)VII型コラーゲンKOマウス背部皮膚を免疫不全マウス背部に移植。② 植皮片下に毛包周囲線維芽細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞をそれぞれ1×106個投与。③ 植皮後のGFP(+)皮膚の形状を、in vivo imagingシステムを用い経時的に観察。④ 組織学的に真皮・脂肪組織の再構築について比較検討。
2: おおむね順調に進展している
① C57BL/6マウスの髭、体毛から、実体顕微鏡を用い結合組織性毛包を分離、培養した。② 筋線維芽細胞で発現がみられるα-SMA、ビメンチンの発現、血管増生に関わるVEGFの発現をRT-PCR、ウエスタンブロット、ELISAで定量的に確認した。③ C57BL/6マウス鼠径より脂肪を採取、コラゲナーゼ処理後細胞を回収、培養、FCM・ソーティングでCD31、CD45陰性、CD90、CD105、Sca1陽性の細胞を回収できた。④ 脂肪細胞誘導培地に切り替え、脂肪細胞への分化能があるか確認した。⑤ 培養中の培養液を用い、サイトカイン・アディポカイン産生をELISA解析している。
表皮水疱症発症マウスの真皮・皮下組織再構築申請者らは、すでにタモキシフェン誘導性のコンディショナルVII型コラーゲンKOマウスを作成し所有している。成人発症させた表皮水疱症をそのマウス由来、つまり正常なVII型コラーゲンを発現できない自分自身の細胞を使い、外力耐性な真皮・皮下組織を再構築できるかを調べる。
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