研究実績の概要 |
INPP4BはPI(3,4)P2のイノシトール環水酸基を脱リン酸化しPI(3)P2へ変換する作用を持つイノシトールリン脂質代謝酵素である。PI(3,4)P2がPI(3,4,5)P3と類似の機能を持つことより、INPP4Bは癌抑制遺伝子産物として機能しているものと推定され、最近注目を集めている。そこで、本研究課題では、メラノーマ発生・進展におけるINPP4Bの生物学的役割を解明するため、メラノサイト特異的にInpp4bを欠失した遺伝子改変マウスを用いて、細胞増殖能、アポトーシス抵抗性、各種シグナル伝達分子の相互作用などを解析するとともに、腫瘍の発生頻度や選択的阻害による転移能の抑制効果を検討する。 この課題を達成するため、まずDct-CreマウスとInpp4b-flox/floxマウスないしPten-flox/floxマウスを交配して、色素細胞特異的Inpp4bホモ欠損マウス、Ptenホモ欠損マウス、Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウスを作成した。しかし、これらのマウスでは、色素細胞由来の良性腫瘍である色素細胞母斑は発生したものの、メラノーマへ進展することは無いことが判明した。そのため、これらのマウスを用いた本研究戦略を断念し、あらたにTamoxifen誘導型Tyr-Cre:Braf変異+Pten欠損マウスを用いて、今後の研究を遂行することにした。すなわち、此のマウスをInpp4b-flox/floxマウスないしPten-flox/floxマウスと交配して、Tamoxifen誘導型Braf変異+Inpp4bホモ欠損マウス、Braf変異+Ptenホモ欠損マウス、Braf変異+Inpp4bホモ・Ptenホモ欠損マウスを作成している。その結果、Tamoxifen誘導型Braf変異+Ptenホモ欠損では、メラノーマの自然発生が確認された。
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