研究課題
本研究は、①マウス胎仔期E12.5-13.5の血液内のみに存在する万能性が高いPDGFRα陽性の胎仔期血液内間葉系幹細胞(Dorsal Aorta Mesenchymal Stem Cells(DAMSCs)(以下PDGFRα+DAMSCsと略す)を効率よく血液中から回収するシステムを構築し、さらに②難治性疾患のモデルマウスに、回収したDAMSCs細胞を投与することで通常のMSCよりも高い治療効果が得られることを明らかにし、難治性疾患の新規治療法の研究基盤を確立することである。現在、PDGFRα+DAMSCsは効率良く分化誘導が懸かることが報告されており、さらに申請者らのグループは、大人のマウスの循環内に皮膚抽出液を投与することで血中のPDGFRα+間葉系幹細胞が血中に動員されることを以前に報告している。このため、E12.5-14.5胎仔時の循環系に皮膚抽出液またはPDGF-AA, BB等の遊走活性のある蛋白質を投与すれば、血中にPDGFRα+DAMSCsがより多く動員され、効率よくこの細胞が回収できることが考えられる。本研究では、PDGFRα+DAMSCsを様々な難治性疾患モデルに投与して、その治療効果を検討したい。
4: 遅れている
本年度は、本研究に使用する手技・条件設定を主眼に研究を施行した。まずは、回収した間葉系幹細胞をskin graft modelマウスに投与した後に、植皮片の生着を左右する血管新生および炎症細胞浸潤などへの影響をFACSで解析するための手技確認を施行した(Foxp3,IL-17A,IL-6,INF-γ,TNF-α等)。また、免疫染色の条件設定(CD3,CD4,CD8,F4/80,SMA,MPO等)も合わせて施行した。
1、妊娠13日目マウス胎仔(P13 embryo)より末梢血を回収し、dish上で分化誘導(脂肪・骨・軟骨)をかけ、胎仔末梢血中のPDGFRα陽性間葉系幹細胞(PDGFRα+DAMSCs)の存在を確認する。2、P13 embryoの末梢血を回収し、胎仔末梢血中のPDGFRα+DAMSCsのpopulationをFACS(CantⅡ)にて測定する。3、P13 embryoから、胎仔末梢血PDGFRα+DAMSCsをsorting(Area)し、dish上で分化誘導(脂肪・骨・軟骨)をかけ、胎仔血液内間葉系幹細胞(DAMSCs)がPDGFRα+cellであり、分化能力が高いことを確認する。4、以前に報告した新生児マウス皮膚抽出液を精製する。市販されているmigration活性を有する蛋白質(PDGF-AA、PDGF-BB、bFGF、VEGF、IGF-1、BMB2、BMB4、TGF-β1、TGF-β3、HGF、IL-3、SDF-1a)を購入する。5、皮膚抽出液及び市販蛋白質をP13-14 embryoの循環血液内に投与し、PDGFRα+DAMSCsが血中に動員されて血液内に増えるか確認する(FACS CantⅡ)。6、皮膚抽出液及び市販蛋白質をP13 embryo(GFP mouse)の循環血液内に投与し、PDGFRα+DAMSCsをsorting(Area)し、1週間程dish上で培養し細胞数を増やす。