研究実績の概要 |
従来よりマスト細胞はⅠ型アレルギーを惹起する細胞として知られているが、近年自然免疫の誘導や調整におけるマスト細胞の重要性が明らかにされてきている。我々は最近、人体にとって重要な病原体のひとつである単純ヘルぺスウイルス(HSV)を用いて、HSV感染防御におけるマスト細胞の重要性を初めて明らかにし、特にマスト細胞の活性化因子となるIL-33が生体防御に有益であることをマウスのHSV皮膚感染モデルを用いて示した。また、in vitroの実験系でIL-33が表皮細胞由来である可能性が示唆されたため、HSV感染皮膚におけるIL-33の産生につき検討した。 B6マウスにHSVを皮内接種し、24時間後の感染皮膚の免疫染色にて表皮細胞にIL-33の発現を認めた。また、接種皮膚の溶解液を用いてIL-33をELISAで測定したところ、IL-33の産生が認められた。HSV感染とIL-33産生との関連を調べるため、同時に感染皮膚のウイルス量も継時的に測定したところ、IL-33はHSV感染価と同様の動態を示し、ウイルスの増殖に伴い、IL-33が放出されている可能性が示唆された。次に、感染皮膚から産生されたIL-33がマスト細胞の活性化刺激となるかどうかをin vivoの実験系を用いて検討した。HSVを皮内接種したB6, IL-33欠損マウス各々から感染皮膚を採取し、表皮シートを培養液に浮かべた後、上清を骨髄由来マスト細胞(BMMC)に添加し、マスト細胞のサイトカイン産生につき調べたところ、B6のHSV感染表皮から採取した上清をBMMCに添加した際にはTNF-α, IL-6産生の増加を認めたが、IL-33-/- マウスの感染表皮から採取した上清の刺激では、マスト細胞から炎症性サイトカインの産生を認めず、HSV感染表皮由来のIL-33がマスト細胞のサイトカイン産生を誘導していると考えられた。
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