研究課題/領域番号 |
26461686
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥山 隆平 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80292332)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Notch / 表皮 / 再生 / 潰瘍 |
研究実績の概要 |
潰瘍が修復する過程で、表皮で発現するNotch1とNotch2の発現量は、生理的に低下することを私は見出した。そこで、潰瘍の再生表皮においてNotchの発現が低下する生理的な意味を明らかにすることを本研究では目指している。まずは、Notchシグナルの阻害剤もしくは特異的siRNAを用いて、表皮細胞で発現するNotchの働きを抑制し、増殖、分化、遊走能の点での変化を解析した。 増殖:Notchシグナルの阻害剤、特異的siRNAのいずれを用いても、表皮細胞の増殖に大きな変化はみられなかった。阻害剤やsiRNAで部分的に抑制したのでは、増殖に顕著な影響を与える訳でないことが明らかになった。 分化:阻害剤、特異的siRNAのいずれでも有棘層特異的に発現するkeratin 1とkeratin 10の発現が低下することがわかった。再生表皮でNotchの発現が低下することは、keratin 1やkeratin 10の発現低下に結びつく可能性があると思われた。 遊走能:scratch assayという手法を用いて、表皮細胞の遊走能を評価した。Notchシグナルを抑制しても、遊走能に顕著な変化は見られなかった。さらに、細胞の運動能に深く関与するRhoとRacの活性をpull down assayで調べたが、Notchシグナルの抑制に伴う変化は乏しかった。 さらにmicroarrayを用いて、Notchシグナルが抑制された際、下流で発現が変化する分子を網羅的にスクリーニングすることを予定していた。一方、DottoらのグループがNotchを活性化した際のmicroarrayの結果を発表した。抑制と活性化と相違があるが、彼らの結果は多いに参考になると考え、現在Notchシグナルが抑制された際に生じる変化について、どの細胞活性に焦点をあてるか検討をはかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養した表皮細胞を用いて、Notchシグナルを抑制した際の細胞変化をin vitroレベルで解析を進めた。その結果、Notchの抑制が表皮細胞の分化に大きな影響があることが明らかになった。その一方、増殖や遊走能には大きな作用がないことも明らかになった。今後、他グループが発表したmicroarrayの結果を踏まえ、再生表皮でのNotchの果たす役割をさらに明らかにしていく道筋も形成されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
microarrayの結果を踏まえ、Notchの発現が低下した際どのような変化が生じるかスクリーニングをはかる。スクリーニングの結果、抽出されてきた分子の変化は、real time RT-PCR法で確認をはかる。その上で、Notchの発現が低下した際に、抽出されたNotchの下流の候補分子、さらにkeratin 1やkeratin 10の発現が変化するか、in vivoレベルで検討をはかる。そのために、マウス皮膚にNotchシグナルの阻害剤を投与することを検討している。 また、再生表皮においてNotchの発現が低下する生理的な意味を明らかにするため、遺伝子導入マウスの作成の準備を進める。再生表皮で特異的に発現するkeratin 6のプロモーターにNotch1もしくはNotch2のcDNAをつなげたプラスミドを作成する。このプラスミドを導入したマウスでは通常の表皮では発現しないものの、再生表皮ではkeratin 6のプロモーターの働きで導入されたNotch遺伝子が発現する。その結果、再生表皮においてNotchの発現が低下しないこととなり、発現低下の意義を明らかにしてくれるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたマイクロアレイの実施を次年度に延期したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成27年度請求額とあわせてマイクロアレイならびにreal time-RT PCRを行う予定である。
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