研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)と乾癬において病変部皮膚角層の長鎖脂肪酸を有するセラミドの割合が減少していること、培養ヒト正常表皮細胞でIFNγが長鎖脂肪酸セラミドの合成に関わる酵素ELOVL、CerSの発現を低下することを見いだしている。ADの慢性病変と乾癬ではIFNγの増加が指摘されおり、それが角層セラミドの脂肪酸を短鎖化し、その結果バリア機能を低下させている可能性がある。この現象をin vivoで検証すべく、アトピー性皮膚炎モデルマウス(NC/Ngaマウス)で角層脂質のセラミド分析、皮膚のELOVL、CerS、およびサイトカインの発現を検討した。 NC/Ngaマウスは本来アトピー性皮膚炎を自然発症するが、我々の施設のconventional環境下では皮膚炎を発症しない。したがって、耳介及び背中にダニ抽出液を週二回、5回ないし9回塗布し検討したところ、5回塗布で皮膚炎、血清IgEの増加、サイトカインの上昇等が起こることを確認した。RT-qPCRにて、耳介のELOVL5,6の減少、CerS3が増加、CerS1,4,5の減少、サイトカインはIFN-γ、IL-4、IL-12の増加を確認した。一方、背部皮膚から脂質抽出しセラミドをLC/MSにて分析したが、安定した脂質抽出法を確立できなかった。そこで耳介からの脂質抽出に変更し、最終的に耳介皮膚を表皮と真皮に分離し、表皮を分析することで安定した脂質抽出ができるようになった。そして、ダニ抽出液塗布群で短鎖セラミド(C14, C16, C18, C20)の割合が増加し、長鎖セラミド(C24, C26)の割合が減少することが確認できた。NC/Ngaマウス胎仔由来ケラチノサイトを培養してELOVL、CerSの分布をみるとELOVL5,6、CerS4,5が多く発現しており、その発現量の変化がセラミド組成の変化をもたらしたと考えられる。
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