研究課題
慢性皮膚疾患では、持続的に表皮角化細胞の破壊や炎症細胞の浸潤が生じ、結果病変部皮膚からはIL-1やIL-18等の炎症性・前炎症性サイトカインが放出される。申請者らはこれまで自然発症型アトピー性皮膚炎(AD)や花粉症免疫療法などアレルギー性炎症の発症機序の解明と治療の研究を行い、皮膚炎にて産生増加するサイトカインの重要性を証明してきた。事実、我々の急性および慢性皮膚炎モデルマウスを詳細に観察したところ、持続性に表皮角化細胞よりIL-1, IL-18等の炎症性・前炎症性サイトカインが過剰産生され、結果高IL-1血症が生じていた。過去には急性の高サイトカイン血症による臓器障害の報告はインフルエンザウイルス等の感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や癌悪液質などでは見られるも、長期間にわたる持続性高IL-1血症により、各種臓器に及ぼす影響は不詳であった。近年、炎症性サイトカインが過剰である皮膚疾患の一つである尋常性乾癬では、アテローム動脈硬化の増加による心血管イベントの危険性が高まり寿命の短縮に至るとのデータが発表された。皮膚疾患が臓器病変に関与する報告であるが、担っているサイトカインや炎症細胞の詳細な原因究明は未だされておらず、且つ他の慢性皮膚疾患においての検索もされていない。本研究においては、我々が確立した2種類の自然発症皮膚炎モデルを利用し、皮膚炎病変部で過剰産生されるサイトカイン、特にIL-1が全身の炎症を引き起こし、心血管病変・脂質代謝異常・全身性アミロイドーシスを生じるに至る可能性を解明する。また炎症抑制を期待しての抗IL-1抗体や炎症性サイトカイン阻害剤の投与により、これらの内臓病変の回避の可能性を検索するものである。
すべて 2017
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