研究課題/領域番号 |
26461691
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鬼頭 昭彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40508438)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SLAM / アトピー性皮膚炎 / IgE |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎をはじめとするTh2型皮膚炎とIgE誘導は、慢性皮膚炎のみならず、喘息や食物アレルギーなどのアレルギー疾患の発症を誘導しうることから、そのメカニズムの解明と、より病態に特異的な免疫制御法の開発が求められている。共刺激分子SLAMはこれまでに、免疫応答のTh2偏倚における重要性が示唆されているが、アトピー性皮膚炎の病態やIgE誘導における詳細な役割はいまだ明らかでない。本研究ではTh2型皮膚炎およびIgE誘導におけるSLAMの詳細な役割を明らかにし、SLAMを介した免疫制御治療の可能性探索を目指している。平成26年度は、マウスアトピー性皮膚炎モデルの皮膚炎発症とIgE誘導におけるSLAMの重要性を検証し、以下について明らかにした。 1.IgE誘導におけるSLAMの関与は、抗原の種類および感作経路によって異なる。 (1)SLAM欠損マウスにおける抗原特異的IgE誘導は、dinitrofluorobenzene (DNFB)の反復経皮感作によるアトピー性皮膚炎モデルでは低下していたが、オキサゾロンあるいは卵白アルブミンの反復経皮感作では野生型マウスと同等であった。(2)卵白アルブミンの腹腔内投与による抗原特異的IgE誘導は、経皮感作による誘導とは異なり、野生型マウスと比較しSLAM欠損マウスで低下していた。 2.SLAMはマウスアトピー性皮膚炎モデルにおける皮膚炎発症に必須ではない。 マウスアトピー性皮膚炎モデルにおける皮膚炎は、SLAM欠損マウスでも野生型マウスと同等に発症した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SLAMがアトピー性皮膚炎様皮膚炎の発症にあまり関与していなかった点は想定外であったが、経皮感作する抗原によって抗原特異的IgE誘導がSLAM依存性の場合と非依存性の場合があることが示唆された。また、同じ抗原であっても、感作経路によってIgE誘導へのSLAMの関与が異なるという興味深い結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究結果により、アトピー性皮膚炎様皮膚炎発症においてはSLAMが重要ではないことが示唆されたため、当初の研究計画のうち、IgE誘導におけるSLAMの役割の解析に焦点を絞る。 1.抗原特異的IgE誘導に重要なSLAM発現細胞(責任細胞)の同定 細胞養子移入や骨髄混合移植により、特定の細胞分画特異的にSLAMを欠損するマウスを作製する。具体的には、(1)T細胞、B細胞を欠くRAG2欠損マウスにSLAM欠損マウスのT細胞をB細胞を養子移入することでT細胞とB細胞でのみSLAMを欠損するマウスを作製、(2)好酸球を欠損するΔdblGATAマウスとSLAM欠損マウスの骨髄混合移植を行うことで好酸球のみSLAMを完全欠損するマウスを作製、などを予定している。これらのマウスにおけるIgE誘導を評価することで、どの細胞分画におけるSLAM発現がIgE誘導に重要かを明らかにする。 2.同定した責任細胞におけるSLAMシグナルの機能解析 1.で同定した、IgE誘導に重要な細胞分画にSLAMシグナルが与える影響を解明する。着目した細胞分画について、野生型細胞とSLAM欠損細胞を、固相化した抗SLAM抗体で刺激し、細胞の活性化やサイトカイン産生などがどのような影響をうけるか解析する。また、野生型裁縫を様々な条件で刺激し、抗SLAM抗体の添加によるSLAMシグナル阻害がどのような影響を与えるかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた国際学会への参加を見合わせたため、旅費など学会発表に予定していた経費を平成27年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度から平成27年度に繰り越した助成金は国際学会などへの参加に伴う経費に使用する予定である。
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