本研究では、食物アレルギーの予防法の開発に向けて、肝臓に存在する類洞内皮細胞(LSEC)のリンパ球寛容システムに着目し、経口免疫寛容におけるLSECの関与を明らかにすることを目的とした。経口免疫寛容が生じる機序については、腸管粘膜における粘膜免疫が深く関わっていると考えられているが、粘膜免疫の主要な場である小腸パイエル板がないマウスでも経口免疫寛容が誘導されるとの報告もあり、全身的な免疫寛容を誘導する他の機序の存在も示唆されている。我々はその一つの可能性として、肝臓のLSECが免疫寛容の誘導に関わっていると考えている。本研究によって、LSECを介した経口免疫寛容の機序が明らかになり、食物アレルギーの新しい予防法の開発につながることが期待できる。 平成26年度は、In vivoでの腸管粘膜を介さない免疫寛容機序の検討をおこなった。マウスへの食物抗原(OVA)感作の前処理として、あらかじめ門脈にOVA抗原を投与すると、その後のOVA感作によるIgE産生が抑えられ、免疫寛容が誘導されることを確認した。平成27年度はIn vitroで、OVAを取り込んだLSEC によってT細胞の免疫寛容が誘導されることを確認した。平成28年度は、OVAを取り込んだLSECをマウスに移植することによって、OVAに対する免疫寛容が誘導されているかどうかを確認し、LSECによって食物抗原の全身的な免疫寛容が誘導されることをマウスモデルで証明することを目指した。しかし、OVAを取り込んだLSECをマウスの肝臓に移植することによって、免疫寛容ではなく、OVA特異的IgEが上昇するような現象が見られることもあった。現時点ではLSECが条件によっては食物アレルギーの悪化に寄与する可能性があるといえる。LSECが免疫寛容を誘導する条件を明らかにすることは今後の研究の課題である。
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