ヒト有棘細胞癌の担癌マウスを作製し解析した。SP細胞は全体の2%ほど存在していた。フローサイトメトリーを用いて細胞を回収し、免疫抑制マウスへの移植実験を行い腫瘍形成能を検討した。しかし、ヌードマウス、NOD/SCIDマウス共にヒトSCC細胞は生着が悪く十分な検討できなかった。このため、spheroid assayを行ったが、いずれの群も十分なspheroidは形成しなかった。そこで、コラーゲンゲルを用いた三次元培養皮膚を作成し、これにセルソーターで採取したSP細胞とnon-SP細胞の腫瘍形成能を検討した。しかし、明らかな違いは見いだせなかった。このため次の候補分子として皮膚ではtransient amplifying cellのマーカーと考えられ、他の癌種では癌幹細胞のマーカーとして知られるCD98に着目しSCCにおける発現をまず免疫染色で検討した。多くのSCCでは浸潤部位に一致してCD98が発現していたが、約1割のSCCでは発現が減弱していた。興味深いことに、リンパ節転移を来した症例の検討では、皮膚の浸潤部位ではCD98発現が減弱しているにもかかわらず、リンパ節転移病巣ではCD98が再び発現していた。同様にCD98陰性のSCC in situの細胞を培養したところ、いずれの細胞もCD98を発現していた。CD98はインテグリンとcouplingすることを考えると、これらの所見はCD98発現細胞群は幹細胞を含んており、また浸潤時(上皮間葉転換時)に際し発現を無くすものの、新たな部位での定着(リンパ節転移病巣の形成)には発現が必要であることが示唆された。SCC in situの培養細胞での検討では、主要組織ではCD98陰性であった細胞が、シャーレ上で培養すると(シャーレに接着すると)CD98が強発現する事も明らかになった。CD98は治療のターゲット分子となり得る可能性がある。
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