研究課題
本研究で、デルマトポンチン(DP)と結合能をもつI型コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンは、いずれも血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子‐2(FGF-2)、血小板由来増殖因子‐BB(PDGF‐BB)と結合することが確認されたが、表皮増殖因子(EGF)のみは明らかな結合は認められなかった。今回精製されたDPは単独でPDGF-BBとごくわずかな結合を示したが、他の細胞増殖因子とは結合せず、以前の知見の再現性は認められなかった。これはロット差があることを示していると考えられた。しかしDPはFGF-2、PDGF-BB、VEGFと、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンとの結合を増強した。さらに我々はコラーゲン、フィブロネクチン、フィブリンによるFGF-2の生物活性の修飾を検討したが、これらのタンパク質によるFGF-2の生物活性の増強は微弱で、DPによる活性の増強は認められなかった。興味深いことに、EGFとの結合がないにもかかわらず、フィブリンは単独でEGFの細胞遊走能を増強し、DPはその細胞遊走増強活性をさらに増強した。他の細胞増殖因子に関してはDPやこれらのタンパク質による生物活性の明らかな増強は認められなかった。DPが多発性骨髄腫細胞であるRPMI8226の増殖を強く抑制することに関し、DP存在下でのRPMI8226の遺伝子発現の変化を検討した。多くの遺伝子でPCRのかからないものが認められ、遺伝子の断片化が高度に引き起こされていると思われた。このため遺伝子発現の比較に関しては実験条件の変更が必要と判断された。これら一連の研究作業中、DPの活性にロット差があると判断された。このことから、可能な限り一定条件でDPを精製する必要が生じたため、リコンビナントタンパク質を発現させ、未変性条件で精製することを開始した。
3: やや遅れている
今回検討した細胞外マトリックス成分とEGF以外の細胞増殖因子は各々別個に生物活性を発揮し、効果は相加的であった。細胞外マトリックス成分があることにより細胞増殖因子の生物学的半減期も延長せず、両者の結合は一部にとどまると考えられた。このため当初予定した人工マトリックスの開発は限定的になることが明らかとなった。これに加えて実験に使用するデルマトポンチンのロット差があることが判明したため、一定条件でデルマトポンチンを精製することが望ましいと考えられた。このためリコンビナントデルマトポンチンを発現させ、可及的未変性条件でこれを精製することに研究がシフトしている。
哺乳類の細胞である293-EBNA細胞にコンストラクトを導入してリコンビナントデルマトポンチンを発現させる系を確立した。今後大量に培養上清を集めて精製を試みる。精製のためには硫酸アンモニウム沈殿で分画したのちにゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーを使用することを計画している。
購入に適した物品があったが、差額の5769円でまかなえなかったため、次年度に繰り越して使用することとしたため。
次年度の物品購入時に繰り入れる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Eur J Dermatol
巻: 24 ページ: 691-693
10.1684/ejd.2014.2427
J Dermatol Sci.
巻: 76 ページ: 51-59
10.1016/j.jdermsci.2014.07.003.
巻: 76 ページ: 34-43
10.1016/j.jdermsci.2014.07.002.
In Vitro Cell Dev Biol Anim.
巻: 50 ページ: 358-366
10.1007/s11626-013-9692-3.
J Invest Dermatol.
巻: 134 ページ: 256-263
10.1038/jid.2013.305.