研究課題/領域番号 |
26461697
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
苅谷 嘉之 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70431559)
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研究分担者 |
上里 博 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10137721) [辞退]
高橋 健造 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 皮膚腫瘍 / 血行転移 / リンパ行転移 / 血管増殖因子 / 予後 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫(メラノーマ)における臨床予後に強く影響する血管・リンパ管の増殖因子を決定するための琉球大学、京都大学、群馬大学の国内3施設共同による後向きコホート研究である。皮膚悪性腫瘍を治療する上で、個別の症例における血行性・リンパ行性転移の可能性を、初期の原発巣の段階で予測することが可能であれば、1.患者予後の推定、2.化学療法を含めた治療方針の最適化、3.フォローアップ期間の重点観察臓器の決定などに大きく有用である。近年の腫瘍外科におけるセンチネルリンパ節生検による転移の有無の確定と、その後のリンパ節郭清術の進歩により、リンパ行性の転移に関しては一定の治療効果も認められており、チェックポイント阻害薬の登場とともに、免疫による腫瘍細胞の排除は、ますます腫瘍治療のメインストリームとして重要となっている。しかし血行性転移に関しては有効な予防策とはならない。本研究課題では、皮膚悪性腫瘍の原発組織や転移組織における、これまでに報告され40種類に及ぶ脈管増殖因子群の発現を免疫染色により網羅的に解析し、臨床予後、他臓器転移、その臓器親和性などの多様な臨床情報を、統計学的に多因子解析する。並立して検索する脈管増殖因子の相対化した危険性を決定することで、皮膚腫瘍の初期段階より、患者の臨床予後や腫瘍の特性を予見しうる因子やその組み合わせを見いだすことを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各参加施設における倫理審査委員会からの承認は既に受け、該当する腫瘍患者の全例の抽出、臨床情報のデータベース化ならびに腫瘍組織の未染色切片の切り出しも、全協力大学で完了した。解析を行っている脈管増殖因子としては、VEGFの各種同位体、placenta growth factor、bFGF、HGF、TGF-b、IGF-1/2、アンギオポエチン、PDGF-B、エフリン、間質細胞分泌因子、CXCR4、CXCL12を加えている。患者の予後が決定したと考えられる1998年から2008年にかけて参加する3大学病院で診断し治療を開始した悪性黒色腫の120余りの症例について、免疫染色による解析を免疫染色による発現解析を既に、メラノーマの患者群でほぼ完了し、その各分子群の発現に関しては結果を得ている。現在までにメラノーマにおける臨床的な予後情報との統計学的な相関を解析することで、転移性の予後因子を見いだすことを続けている。黒色腫においてはある一定の発現傾向があることが確認されつつある。 いずれの施設のメラノーマの症例にも共通して、VEGF-B, C, D、TGF-b、CXCL12、PDGF-B、Angiopoietin1、Epherin B2、HGFaの発現は、各患者毎のメラノーマ症例間でその腫瘍細胞における発現に、非常に大きな差が認められた。即ち、個々の患者の腫瘍臨床像の違いに寄与している可能性が大きく示唆される。IGF-1、bFGF、VEGF-Aは、全てのメラノーマの腫瘍細胞がそれぞれ一様に発現しており、症例間での差異が乏しかった。これらの因子はメラノーマという腫瘍の形成自体に根幹として寄与している可能性があり、これらを目標とした治療法は、全般的な予後の改善をもたらす可能性を推察した。PEDF、Endoglin、Snailは、いずれのメラノーマ腫瘍においても、発現が確認されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
残りの患者の未染色病理標本をこれら各因子の特異的抗体を用いた酵素抗体法により染色する。さらに、4-5年経過した黒色腫患者の病理標本や臨床経過のデータ取得の準備や確認を行う。各因子の発現を全腫瘍細胞に対する発現細胞の割合、もしくは発現強度の比較により数値化する。 発現細胞の割合の高い群、もしくは発現強度の強い群において、観察項目、特に病期と予後、転移出現時期の統計的差異の有無等の多因子を網羅的に検討する。 また逆に予後の悪い群、もしくは転移出現時期の早い群における、各因子の発現傾向を検討することで、各皮膚悪性腫瘍(悪性黒色腫、有棘細胞癌、パジェット病)の予後を決定しうる因子を同定する。 平成27年度の悪性黒色腫の患者標本の染色や疫学解析の結果を参考にし、有棘細胞癌、乳房外パジェット病の患者標本における同様の染色解析を全て終了し、その匿名化した疫学的データとの多因子解析を終了させる。さらに今回のプロトコール発案後に新規に報告された脈管増殖因子についても、黒色腫を含めた病理組織切片で同様の解析を加える。 さらに本研究で患者予後に関与しうる因子が同定された際は、全国的な病理検査組織を申請者の前任地である札幌皮膚病理研究所との協力の上、解析因子を限定した上でのより大きな規模でのその後の発現解析の機会を新たに模索したい。
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