研究課題
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の病態形成には、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化が重要な役割を担っているものと考えられているが、HHV-6の再活性化機序やこのウイルスの病態への関わりについては,今なお不明な点が多い。われわれは、DIHS急性期にHHV-6の再活性化に先行してTh2関連ケモカインの一種であるTARC、MDCの血中濃度が著しく上昇すること、TARC、MDC上昇の程度とHHV-6再活性化の程度が相関していること、HHV-6がケモカインレセプターホモログをコードしていることに着目し、ケモカインがHHV-6の再活性化や増殖におよぼす影響および、そのメカニズムを明らかにすることにより、DIHSの病態解明を目指している。今回の研究では、まず末梢血単核球培養系を用いて、ケモカイン刺激がHHV-6受容体発現におよぼす影響について検討した。その結果、DIHS急性期に特異的に上昇するTARC、MDCなどのTh2関連ケモカイン刺激はCD4陽性T細胞上のHHV-6受容体発現を亢進させること、一方、IP-10、MIGなどのTh1ケモカインはHHV-6受容体発現に影響を与えないことをみいだした。さらに、DIHS患者(n=6)末梢血単核球のFACS解析の結果、急性期においてCD4陽性T細胞上のHHV-6受容体発現が、DIHS以外の薬疹(n=14)と比較して有意に亢進していることが明らかとなった。以上の結果から、DIHS急性期におけるTARC、MDCの上昇は、CD4陽性T細胞上のHHV-6受容体発現を亢進させ、生体内でのHHV-6の増殖に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
われわれは、これまでにDIHS急性期にHHV-6の再活性化に先行してTh2関連ケモカインのTARC、MDCの血中濃度が著しく上昇することをみいだし、さらにTARC、MDC上昇の程度とHHV-6再活性化の程度が相関していることから、HHV-6の再活性化にこれらのケモカインが何らかの役割の担っているのではないかと推測していた。しかし、その詳細はほとんど分かっていなかった。今回の研究により、これらのケモカインがHHV-6受容体の発現を亢進させることが明らかとなり、さらに、実際の生体内においても、DIHS急性期にCD4陽性T細胞上にHHV-6受容体発現が亢進していることが判明した。以上の知見により、DIHSにおけるHHV-6の増殖メカニズムの一端が明らかになったことから、本研究成果は、DIHSにおけるHHV-6再活性化の全容解明に向けての大きな一歩であろうと考えられる。
今回われわれは、DIHS初期に上昇するTARC、MDCが、T細胞上のHHV-6受容体発現を亢進させることをみいだしたが、今後は、HHV-6感染培養細胞ならびに患者由来細胞を用いた研究によりTARC、MDC刺激が、HHV-6再活性化関連遺伝子の発現やケモカイン受容体の発現にいかなる影響をおよぼすのかについて検討し、DIHSにおけるHHV-6再活性化メカニズムの解明をさらに進める。また、HHV-6潜伏感染モデルマウスの作製を試み、このマウスを用いて生体内におけるHHV-6再活性化プロセスの解明も目指す。
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