研究課題
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の病態形成には、HHV-6の再活性化が重要と考えられているが、その機序については不明な点が多い。われわれは、DIHS急性期にTh2関連ケモカインの一種であるTARC、MDCが著しく上昇すること、その上昇の程度とHHV-6再活性化の程度が相関していることに着目し、ケモカインとHHV-6再活性化との関わりを調べることにより、病態解明を目指している。初年度は、DIHS急性期にT細胞上のHHV-6受容体(CD134)の発現が亢進すること、TARCの上昇がこの現象に関わっている可能性を示した。昨年度は、① CD134の発現亢進がDIHS特異的にみられる現象かどうか、② CD134を発現している細胞がT細胞のどのサブセットに属するのかについて検討した。DIHS、Stevens-Johnson症候群(SJS)、紅斑丘疹型薬疹(MPE)について検討した結果、急性期には3群すべてで、CD4陽性T細胞にCD69発現亢進、CD62L発現低下をみとめ、何れの群でもCD4陽性T細胞が活性化していることが確認された。一方、CD134の発現亢進はDIHS急性期に限られていた。また、DIHS急性期にTregが増加することが知られていることから、FoxP3、CD25の発現を検討したところ、通常の活性化T細胞に加えてTregの一部にもCD134の発現がみられることが判明した。本研究により、DIHS 急性期にT細胞上のHHV-6受容体発現が特異的に亢進することが判明したが、この現象が生体内でのHHV-6の感染拡大に関わっている可能性が示唆された。この知見は、DIHSにおけるHHV-6再活性化メカニズムの謎を解く手掛かりとなるとともに、将来CD134分子を標的としてHHV-6の感染拡大を阻止する治療法の開発につながることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
われわれは、これまでにDIHS急性期にHHV-6の再活性化に先行してTh2関連ケモカインのTARC、MDCの血中濃度が著しく上昇することをみいだし、さらにTARC、MDC上昇の程度とHHV-6再活性化の程度が相関していたことから、HHV-6の再活性化にこれらのケモカインが何らかの役割を担っているのではないかと推測したが、その詳細は分かっていなかった。初年度の研究では、これらのケモカインがT細胞上のHHV-6受容体(CD134)の発現を亢進させる可能性を見出したが、昨年度は、実際の生体内においても、DIHS 急性期にCD4陽性T細胞の活性化に伴いCD134の発現が亢進することが判明し、一方、他のタイプの薬疹ではCD4陽性T細胞の活性化はみられるものの、CD134の発現増強はみられないことが明らかとなった。T細胞上のHHV-6受容体の発現増強はDIHSの急性期に特異的な現象であり、DIHS急性期におけるHHV-6の生体内での感染拡大に密接に関わっているものと考えられた。以上の知見は、DIHSにおけるHHV-6再活性化メカニズムの謎を解く手掛かりとなるとともに、将来CD134分子を標的としてHHV-6の感染拡大を阻止する治療法の開発にもつながることが期待される。さらに、急性期におけるCD134の発現増強は、DIHSに特異的な現象であることから、DIHSの早期診断のマーカーとしての応用も期待できる。
今回われわれは、実際の生体内で、DIHS急性期にT細胞上のHHV-6受容体(CD134)の発現が亢進していることをみいだしたが、今後は、患者由来HHV-6潜伏感染細胞ならびにHHV-6感染培養細胞と、CD134発現T細胞とを用いた共培養実験によりHHV-6再活性化メカニズムの解明を進め、さらにTARC、MDCによる刺激実験により、Th2関連ケモカインがDIHSにおけるHHV-6再活性化に果たす役割についても明らかにする。また、HHV-6潜伏感染モデルマウスの作製を試み、このマウスを用いて生体内におけるHHV-6再活性化プロセスの解明も目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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