研究課題/領域番号 |
26461705
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
伊藤 祥輔 藤田保健衛生大学, その他部局等, 名誉教授 (70121431)
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研究分担者 |
若松 一雅 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 教授 (80131259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メラニン / 紫外線 / ユーメラニン / フェオメラニン / UVA |
研究実績の概要 |
メラニンには黒色のユーメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、前者は紫外線防御に働くが、後者は光発がんをもたらすと言われている。メラニンはメラノサイト内のメラノソームおいて産生され、ケラチノサイトへ転送されるが、その後の紫外線による生体内での分解については、ほとんど不明であった。平成23-25年度の基盤研究(C)において、UVA照射によりユーメラニンではベンゼン環の開裂と架橋形成、フェオメラニンではベンゾチアジン構造からベンゾチアゾール構造への変化が起こることを明らかにした。本研究では、これらの成果をさらに発展させ、ユーメラニンとフェオメラニンの紫外線(特にUVA) による分解過程およびその生理的意義を、合成メラニン、毛髪メラニン、ヒト正常メラノサイト、ヒト皮膚を用いて解明したい。メラニン分解の追跡には、我々の開発したメラニンの化学的定量法を活用する。 平成26、27年度には、合成ユーメラニンであるDHICA-メラニンについて、その可溶性を利用して、差スペクトル法によりUVAによる分解過程を解明し、Pigment Cell Melanoma Res誌に発表した(2016)。その内容は、1)還元型から酸化型への変化、2)ベンゼン環の開裂、3)メラニンの分解、の順で起こることを解明した。同時に、この過程でスーパーオキサイドラジカルや一重項酸素が産生され、メラニン構造の分解に関与していることも明らかにした。なお、一重項酸素の産生およびそのメラニンとの反応の確証は、ポーランド国Jagiellonian大学のTadeusz Sarna教授との共同研究の成果である。また、短波長可視光線照射による合成メラニンの分解過程における一重項酸素の産生について、比較研究がSarna教授との共同研究として進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
合成ユーメラニンであるDHICA-メラニンを用いた、ユーメラニンのUVAによる分解過程の解析は、当初の予定どおりに進行して、専門誌に発表することができた。その成果を発展させた、短波長可視光線による合成メラニンからの一重項酸素の産生について、共同研究が進行中である。また、フェオメラニンが紫外線照射によらなくてもグルタチオンなどの生体還元剤を酸化し、同時に活性酸素を産生するという知見も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、合成フェオメラニンについて、差スペクトル法を用いてUVAによる分解過程を解明する。ヒト皮膚におけるメラニン(ユーメラニンおよびフェオメラニン)のUVAおよび短波長可視光線による分解過程の解明については、Kolbe博士(ドイツBeieresdorf社)との共同研究として、今年度中に実施することが決定している。さらに、マウス体毛メラニンについても黒色(ユーメラニン)、黄色(フェオメラニン)、および白色(メラニン無し)の体毛を広部博士(放射線医学総合研究所)から入手しており、これらを用いる実験も推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度当初に、印刷中の論文の投稿費(エクストラページ費、カラー印刷費、計15万円)が見込まれるため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿費として別途15万円、外国旅費として25万円(ヨーロッパ色素細胞学会)、残額は主として物品費に充てる。
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