研究課題
メラニンには黒色のユーメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、前者は紫外線防御に働くが、後者は光発がん性をもたらすと言われている。メラニンはメラノサイト内のメラノソームで産生され、ケラチノサイトへ転送されるが、その後の紫外線による生体内での分解については、ほとんど不明であった。本研究では、ユーメラニンとフェオメラニンの紫外線(特にUVA)による分解過程およびその生理的意義を、合成メラニン、毛髪メラニン、ヒト正常メラノサイト、ヒト皮膚を用いて解明したい。メラニン分解の追跡には、我々の開発したメラニンの化学的定量法を活用する。研究成果として、合成ユーメラニンであるDHICA-メラニンについて、その可溶性を利用して、差スペクトル法によりUVAによる分解過程を解明し、Pigment Cell Melanoma Res誌に発表した(2016)。その内容は、1)還元型から酸化型への変化、2)ベンゼン環の開裂、3)メラニンの分解、の順で起こることを解明した。同時に、この過程でスーパーオキサイドラジカルと一重項酸素が産生され、メラニン構造の分解に関与していることも明らかにした。なお、一重項酸素の産生およびそのメラニンとの反応の確証は、ポーランド国Jagiellonian大学のTadeusz Sarna教授との共同研究の成果である。さらに、短波長可視l光線照射による合成メラニンの分解過程において、スーパーオキサイドラジカルと一重項酸素が産生され、それらがメラニンとの反応により消費されることを、引き続く共同研究で明らかにした(Pigment Cell Melanoma Res, 2016)。ヒト正常メラノサイトを用いる実験は現在進行中であるが、メラニンの分解過程に短波長可視l光線が寄与するという実験結果を得ている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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