研究課題
人の悪性黒色腫、基底細胞癌などの皮膚悪性腫瘍における遺伝子変異誘導蛋白AID(activation-induced deaminase)の発現を滋賀成人病センターとの共同研究で検討したところ、悪性黒色腫で42.9%、基底細胞癌で15.4%AID陽性であった。また、AIDを表皮特異的にマウスに発現させたトランスジェニックマウスでは、有棘細胞癌様の皮膚癌が自然発症した。これらの腫瘍では、癌抑制遺伝子Trp53、Hras遺伝子に変異が見られた。一方AID遺伝子を欠損したマウスでは化学物質による有棘細胞癌の発生率はコントロールマウスより減っていた。有棘細胞癌組織パラフィン切片をAIDに対する抗体を用いて免疫組織化学を行った。抗体はインビトロゲン社よりマウス抗ヒトAIDモノクローナル抗体(クローンZA001)を使用した。パラフィン切片を脱パラフィン処理を行い、pH6.0の抗原賦活用バッファー中で15分間オートクレーブし、抗原を賦活化した。リン酸緩衝生理食塩水PBS(Phosphate buffered saline)で洗浄した後、過酸化水素水で5分間ブロッキングを行った。50倍希釈した抗ヒトAIDモノクローナル抗体(クローンZA001)と37度で1時間反応させ、PBSで洗浄した後、シンプルステイン(ニチレイバイオサイエンス)を30分間反応させ、PBSで洗浄した。蒸留水で1分間流水水洗し、マイヤーのヘマトキシリンで染色を行った。97名の有棘細胞癌患者の中AIDが発現しているのは49症例であった。経過観察中再発症例では8症例全例でAIDが発現していた。リンパ節転移、肺転移例ではそれぞれ14、2症例全例でAIDが発現していた。これらの結果から、AIDを強発現している皮膚有棘細胞癌症例は予後が悪い可能性が示唆され、今後皮膚有棘細胞癌の予後を占うマーカーの1つにAIDが用いられることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
人の悪性黒色腫におけるAIDの発現と遺伝子変異の間に相関関係があることを示したため。
人の悪性黒色腫におけるAIDの発現と予後との関係について検討する。
実験が当初見込みより順調に進捗したため。
次年度には積極的に実験結果を学会で発表を行うとともに、さらに実験を推進させる。
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