研究課題
人の悪性黒色腫、基底細胞癌などの皮膚悪性腫瘍における遺伝子変異誘導蛋白AID(activation-induced deaminase)の発現を滋賀成人病センターとの共同研究で検討したところ、悪性黒色腫で42.9%、基底細胞癌で15.4%AID陽性であった。悪性黒色腫でAID高発現10例中、9例にBRAF遺伝子に変異がみられ、うち8例はリンパ節、他臓器への転移症例であった。また、AIDを表皮特異的にマウスに発現させたトランスジェニックマウスでは、有棘細胞癌様の皮膚癌が自然発症した。これらの腫瘍では、癌抑制遺伝子Trp53、Hras遺伝子に変異が見られた。一方AID遺伝子を欠損したマウスでは化学物質による有棘細胞癌の発生率はコントロールマウスより減っていた。有棘細胞癌組織パラフィン切片をAIDに対する抗体を用いて免疫組織化学を行った。97名の有棘細胞癌患者の中AIDが発現しているのは49症例であった。経過観察中再発症例では8症例全例でAIDが発現していた。リンパ節転移、肺転移例ではそれぞれ14、2症例全例でAIDが発現していた。続いて人メラノサイト、表皮細胞で恒常的にAIDを強発現している細胞を得るためにAID発現ベクターを人メラノサイトにトランスフェクションし、紫外線照射を行ったところ、8クローン中2クローンでBRAF遺伝子に変異が見られた。これらの結果から、AIDを強発現している悪性黒色腫、有棘細胞癌症例は予後が悪い可能性が示唆され、今後悪性黒色腫、有棘細胞癌の予後を占うマーカーの1つにAIDが用いられることが期待される。
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Journal of Clinical Investigation
巻: 126 ページ: 1367-1382
10.1172/JCI81522