研究課題/領域番号 |
26461707
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
後藤 孝也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 客員協力研究員 (80284355)
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研究分担者 |
安田 武嗣 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 主任研究員 (60332269)
富山 健一 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 博士研究員 (20584064)
小原 千寿香(逸見千寿香) 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, 研究員 (90415977)
田嶋 克史 独立行政法人放射線医学総合研究所, 緊急被ばく医療研究センター, プログラムリーダー (80292423)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん / 細胞内情報伝達 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
ラット及びマウスの神経節細胞にras及びmosを導入した変異細胞株を用いた腫瘍細胞モデル系を使い解析をおこなった。各細胞にセシウム線源からのガンマ線、1Gy、2Gyおよび8Gyをそれぞれ照射し、その後の細胞の形態学的変化及び細胞生化学的変化を経時的に観察した。細胞生化学的変化としては、各細胞の細胞分画を①細胞質蛋白質②膜蛋白質③核蛋白質④クロマチン結合蛋白質⑤細胞骨格蛋白質に分画した上で放射線照射前と後でのそれぞれの蛋白質分画を2D-DIGE法で比較検討した。 8Gy照射後48時間では、細胞の多く(80~90%以上)に細胞死を誘発した。また1Gy照射でも比較的多くの細胞が死細胞となることが観察された。しかし生き残った細胞には、明らかな形態変化は見られなかった。 放射線照射前後の2D-DIGE法解析の結果、明らかな増減を示す蛋白質スポットは、膜蛋白質分画では見られず、細胞質蛋白質分画、クロマチン結合蛋白質分画では、それぞれ数個が有意なスポットとして観察された。対照群としては、細胞分裂の速度が早い腸管細胞株:IEC6と肝癌細胞由来の細胞株:HepG2を同じく放射線照射前後で同様に分画を比較し、その変化が神経細胞特異的なものか否かを検討した。 細胞分画で得られる蛋白のパターンはそれぞれ細胞ごとに異なり、共通するスポットは限られた。それらの共通するスポットの中に照射前後で異なるものがあれば、神経細胞で見られた蛋白質の変化は放射線共通の反応である可能性が高くなり、神経細胞特異的な変化であれば、神経細胞に固有の変化と判断出来る。これまでの解析の結果、神経特異的な蛋白質スポットを発見するには至っていないが、いずれの細胞にも共通するクロマチン結合蛋白質のスポットとして有力な蛋白スポットを見出しており、現在同定及び解析を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞から各蛋白質を抽出する段階で適切な分画方法が見つからず、分画方法の検討に時間が掛かったため。また、細胞に照射する放射線量の適切な線量がなかなか決まらず、照射線量の設定に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
現状の細胞内蛋白質の分画方法でまだ十分であるとは言えない。有力なスポットが見いだされている細胞質蛋白質、クロマチン結合蛋白質に対してさらに追加的な分画が必要である。また、蛋白質の機能面に注目した分画方法として、①リン酸化蛋白質分画、②糖鎖の結合した蛋白質などの分画などを計画している。 現状で確認されている有力な蛋白質のスポットを質量解析装置を用いて同定する。さらには、同定した蛋白質が放射線に誘発される細胞死に関与するかどうかの検証解析を行う。問題点としては、蛋白質を同定する為にはかなりの量の分画された蛋白質が必要となる点である。該当する蛋白質を効率良く分離回収し、質量分析などの同定解析に供せる量を得るための方法の検討を進める。また、細胞の遊走性と放射線による影響について解析を加える計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入する試薬において、短く使用期限の限られたものがあり、使用する頻度と実験の予定を考慮すると、購入時期を次年度にせざるを得ない状況になったため。この使用期限の限られた試薬に購入が遅れたのは、研究計画の遅れに起因するものであり、そのため、試薬の消費が予定より遅かったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、計画の遅れを取り戻し計画通り遂行する。
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