研究課題/領域番号 |
26461709
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
栗田 征武 東北大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (10423790)
|
研究分担者 |
守屋 孝洋 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80298207)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 時計遺伝子 / Clock / 気分障害 / 神経幹細胞 / 海馬ニューロン新生 |
研究実績の概要 |
古くより生体リズムの異常と気分障害には深い関係性があることが指摘されているが、体内時計の異常が気分障害発症の一因であるかどうかは証明されていない。ところで、時計遺伝子の一つであるclock 遺伝子の変異はマウスにおいて躁様症状を惹起することが報告 された。一方、海馬ニューロン新生の異常は気分障害発症に深く関与することが知られているが、我々は神経幹細胞の細胞分裂が特定の時刻に好発することや、clock 変異マウスにおいて、神経幹細胞の増殖が亢進することを見出している。そこで本研究では、clock 変異マウスを用い、clock 遺伝子がどのような仕組みで神経幹細胞の細胞分裂を制御しているのかを明らかにし、神経幹細胞における体内時計の異常が気分障害の発症の一因になっている可能性を検討することを目的とした。 平成26年度の研究では、ClockΔ19 変異が分離培養した神経幹細胞の増殖に与える影響を解析した。胎生マウス前脳由来の培養神経幹細胞を用いた生細胞数アッセイやBrdU免疫染色により評価したところ、Clock変異マウス由来の神経幹細胞は野生型に比較してEGFによる増殖が亢進していた。さらに、PCRアレイにより細胞周期関連遺伝子のmRNA発現レベルを比較したところ、Clock変異マウス由来神経幹細胞において、野生型マウス由来とは発現パターンの異なるいくつかの細胞周期関連遺伝子を見出した。以上の結果より、体内時計の分子的本体である時計遺伝子のClockは、細胞周期関連遺伝子の発現を直接的あるいは間接的に制御することで、神経幹細胞の細胞分裂を調節していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開始前(平成25年度以前)に予備的な実験により、野生型マウス由来の神経幹細胞の増殖解析方法のノウハウを確立していたこと、およびその増殖のピークが1日の特定の時刻に観察されることを見出していたことが「研究の目的」を達成できた主な理由であると思われる。また、研究代表者および研究分担者の所属する実験動物飼養保管施設のキャパシティが高く、多数のClock変異マウスを飼育可能な環境が備わっていたことも要因の一つであると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究により、個体レベルにおけるClock遺伝子の神経幹細胞の諸機能における役割が明らかになり、さらに平成27年度の研究では、培養神経幹細胞のEGF反応性を解析し、時計遺伝子の急性発現誘導だけでなく、CyclinD2などいくつかの細胞周期関連因子のEGFによる急性発現誘導がClock変異で促進することが示された。そこで今後は、当初の予定通り、ClockΔ19変異マウスの躁様行動が双極性障害の躁状態モデルとして妥当なのかどうかを尾懸垂試験、強制水泳試験、高架式十字迷路試験、オープンフィールド試験、イントルーダー攻撃行動観察、新規摂食抑制試験などで評価し、それらに対する気分安定薬のリチウム、バルプロ酸に加え、抗不安薬のジアゼパムの効果を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Clock変異マウス由来の神経幹細胞の培養について、フリーズストックが利用可能であることが分かり、実験動物の餌代・床敷代に余裕が生まれ、これにより当該助成金が発生した。また、研究着手前の予備実験により、免疫染色の至適条件をすでに確立できていたことも抗体などの染色試薬の節約につながり、これにより当該助成金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
Clock変異マウスの維持のための飼育飼料代の一部に用いる。
|