研究課題
古くより生体リズムの異常と気分障害には深い関係性があることが指摘されているが、体内時計の異常が気分障害発症の一因であるかどうかは証明されていない。ところで、時計遺伝子の一つであるclock遺伝子の変異はマウスにおいて躁様症状を惹起することが報告された。一方、海馬ニューロン新生の異常は気分障害発症に深く関与することが知られているが、申請者らは神経幹細胞の細胞分裂が特定の時刻に好発することや、clock変異マウスにおいて、神経幹細胞の増殖が亢進することを見出している。そこで本申請研究では、clock変異マウスを用い、clock遺伝子がどのような仕組みで神経幹細胞の細胞分裂を制御しているのかを明らかにし、神経幹細胞における体内時計の異常が気分障害の発症の一因になっている可能性を検討することを目的とした。平成26-27年度の研究において、Clock変異神経幹細胞の増殖因子EGFに対する細胞分裂活性は野生型細胞に比較して亢進していることが明らかになり、これはいくつかの細胞周期関連遺伝子発現の変化に起因する可能性が示唆された。平成28年度の研究においてはClockタンパク質とヘテロダイマーを形成し、E-boxに結合し転写促進因子として機能するBmal1に着目し、この遺伝子欠損マウス由来の神経幹細胞のEGF応答性を検討したが、Clock変異マウスとは対称的にEGF応答性が低下していた。したがって、Clock変異細胞のEGF応答性は分子時計に非依存的なClockの機能変異によってもたらされている可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件)
PLoS One
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