ゲノムワイド関連解析とDNAメチル化解析を統合したパニック障害候補遺伝子の探索

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26461712
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 梅景 正 東京大学, 環境安全本部, 准教授 (20323587)
• 研究分担者: 音羽 健司 帝京平成大学, 臨床心理学研究科, 教授 (70456119)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: パニック症 / HLA / 免疫系 / DNAメチル化

研究実績の概要

本研究では、パニック障害に関連する遺伝要因ならびにエピゲノム要因を探索することで、疾患発症に関わるメカニズムの解明につながる成果を得ることを目的として、ゲノム・エピゲノム双方の観点から研究を実施してきた。
ゲノム研究としては、我々はすでにパニック障害のGWASを実施し、そのデータを用いた複数の解析から、ヒト白血球抗原（HLA）に着目し、HLA-DRB1*13:02が疾患と関連することを見出して報告をしている。今年度はHLA解析をさらに日本人以外の他集団にも広げて実施した。米・NIMHのグループとの共同研究により、ヨーロッパ系集団のGWASデータを使用し、HLA imputation解析を実施した。決定した遺伝子型を患者・健常者で比較した結果、日本人の患者群で頻度が高かったアリルは、ヨーロッパ系集団でも同様の傾向を示した。また日本人では見られない複数のアリルがヨーロッパ系集団のパニック障害に統計学的有意な関連を示した。
エピゲノム研究としては、パニック障害のゲノムワイドメチル化解析の結果得られた疾患関連候補メチル化領域の近傍の遺伝子を用いたパスウェイ解析を実施した。その結果「白血球の活性化の制御」を含む複数のパスウェイが検出された。
さらに我々はゲノム研究とエピゲノム研究で得られたデータを統合的に解析することを試みた。疾患に関連する可能性のあるメチル化領域に影響を与えるとして報告されているSNP（meQTL）の中にGWASにおいて関連を示すものがないかを探索した。現在のところ強い関連を示すSNPの同定には至っていないが、今後さらに検出力を高めた解析を検討していく予定である。
以上のゲノム・エピゲノム解析から得られた結果は共に免疫系のパニック障害への関与を示唆しており、今後免疫系に着目したさらなる解析が重要であると考えられる。

研究成果

• [雑誌論文] Epigenome-wide association study of DNA methylation in panic disorder (2017)
  • 著者名/発表者名: Shimada-Sugimoto, M., T. Otowa, T. Miyagawa, T. Umekage, Y. Kawamura, M. Bundo, K. Iwamoto, M. Tochigi, K. Kasai, H. Kaiya, H. Tanii, Y. Okazaki, K. Tokunaga and T. Sasaki
  • 雑誌名: Clinical Epigenetics 巻: 9:6 ページ: 1-11
  • DOI: 10.1186/s13148-016-0307-1
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Meta-analysis of genome-wide association studies of anxiety disorders. (2016)
  • 著者名/発表者名: Otowa T, Hettema JM
  • 雑誌名: Molecular Psychiatry 巻: 21 ページ: 1391-1399
  • DOI: 10.1038/mp.2015.197
  • 査読あり
• [雑誌論文] Candidate Genes in Panic Disorder: Meta-analyses of 23 common variants in major anxiogenic pathways. (2016)
  • 著者名/発表者名: Howe A, Buttenschøn H, Bani-Fatemi A, Maron E, Otowa T, Erhardt A, Binder E, Gregersen N, Mors O, Woldbye D, Domschke K, Reif A, Shlik J, Koks S, Kawamura Y, Miyashita A, Kuwano R, Tokunaga K, Tanii H, Sasaki T, De Luca V, Smoller J, Koszycki D
  • 雑誌名: Molecular Psychiatry 巻: 21 ページ: 665-679
  • DOI: 10.1038/mp.2015.138
  • 査読あり
• [雑誌論文] The First Pilot Genome-Wide Gene-Environment Study of Depression in the Japanese Population. (2016)
  • 著者名/発表者名: Otowa T, Kawamura Y, Tsutsumi A, Kawakami N, Kan C, Shimada T, Umekage T, Kasai K, Tokunaga K, Sasaki T
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 11(8) ページ: 1-14
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0160823. eCollection 2016.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] パニック症のゲノムワイド関連解析のHLAアリルによる層別解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉本美穂子, 音羽健司, 宮川卓, Khor Seik-Soon, 大前陽輔, 豊岡理人, 柏瀬貢一, 小島裕人, 二神貴臣, 佐治博夫, 佐々木司, 徳永勝士
  • 学会等名: 日本組織適合性学会
  • 発表場所: 北海道札幌市
  • 年月日: 2016-10-23
  • 国際学会
• [学会発表] Epigenome-wide association study of DNA methylation in panic disorder (2016)
  • 著者名/発表者名: Mihoko Shimada-Sugimoto, Takeshi Otowa, Taku Miyagawa, Nagisa Sugaya, Yoshiya Kawamura, Tadashi Umekage, Hisanobu Kaiya, Kiyoto Kasai, Hisashi Tanii, Yuji Okazaki, Katsushi Tokunaga and Tsukasa Sasaki
  • 学会等名: America Society of Human Genetics 2016
  • 発表場所: Vancouver
  • 年月日: 2016-10-21
  • 国際学会
• [学会発表] Genome-wide association study in a Japanese sample identifies candidate loci for HLA-DRB1*13:02-negative panic disorder (2016)
  • 著者名/発表者名: Mihoko Shimada, Takeshi Otowa, Taku Miyagawa, Seik-Soon Khor, Yosuke Omae, Licht Toyo-oka, Nagisa Sugaya, Yoshiya Kawamura, Tadashi Umekage, Akinori Miyashita, Ryozo Kuwano, Hisanobu Kaiya, Kiyoto Kasai, Hisashi Tanii, Yuji Okazaki, Katsushi Tokunaga, Tsukasa Sasaki
  • 学会等名: The 13th International Congress of Human Genetics
  • 発表場所: Kyoto
  • 年月日: 2016-04-03 – 2016-04-07