研究課題
強迫性障害(obsessive-compulsive disorder; OCD)は遺伝性が高く、何らかの遺伝的な要因が発症に関わることが推定されている。今回われわれは2種類の機能画像手法、プロトンMRS(proton magnetic resonance spectroscopy;1H-MRS)と、多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy;NIRS)を中間表現型として、OCDのリスク遺伝子及び薬物応答性に関わる遺伝子をゲノムワイドな遺伝子多型解析を用いて見出すための研究を行った。プロトンMRSでは主に基底核における脳内アミノ酸系神経伝達物質の変化、多チャンネルNIRSでは認知機能検査施行中の前頭葉血流変化に着目した。まず遺伝子多型解析はOCD患者175例と健常対象者2027名の末梢白血球から得られた遺伝子サンプルを用いて、Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)のVal66Met多型およびcatechol-o-methyltransferase (COMT)のVal158Met多型と発症リスクとの関連を調べ、さらに本研究結果を含めたメタ解析を行った。さらに96例のOCD患者の薬物応答性と遺伝子多型との関連を調べた。これらの結果は、2014年にNeuroscience、第36回日本生物学的精神医学会、第24回日本臨床精神神経薬理学会で発表した。また、機能画像データは42例のOCD患者と年齢性別の一致した健常対象者42例のStroop検査とVFT試行中のNIRSの撮像を行い、認知機能検査施行中の前頭葉血流変化と薬物応答性との関連を解析中である。また、3Teslaの高磁場MR装置を用いた70例のOCD患者と年齢性別の一致した健常対象者70名の1H-MRSの撮像を行い、基底核における脳内代謝物変化が薬物応答性や臨床データとの関連を解析している。今後は遺伝子と機能画像で得られたデータがどのようにOCDの薬物応答性に関与するかの検討を行い、学会発表、論文化する予定である。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子解析およびNIRSと1H-MRSの撮像は順調に行われており症例数も解析に十分なレベルに増えつつある。個々の患者の薬物応答性や臨床特徴のデータとの照合が行える状態である。
さらにサンプル数を増やして個々の症例の経時的臨床経過と薬物応答性と遺伝子多型および1H-MRSとNIRSで得られた機能画像データとの関連を調べる。結果をまとめ、先行研究や他の機能画像を用いた論文との比較を行い、前頭葉血流変化や脳内代謝物変化を中間表現型としたOCDの薬物応答遺伝子を見出してゆく。次年度の研究費は画像解析ソフトと統計解析ソフトの購入、研究補助謝金、成果報告のための学会旅費に使用する予定である。
研究を進める上で残額が生じた。
次年度への繰越金は消耗品に使用予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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