本研究では統合失調症、双極性障害、パニック障害などを含む精神疾患、および自閉症、トゥレット障害などを含む発達障害などの精神科領域の疾患について、多発家系、孤発例家系や一卵性双生児不一致例を対象にした解析を行い、Multiple Rare Variant-Common Disease (MRVCD)仮説に基づき、頻度は稀であっても寄与度の高い遺伝子変異を同定することを目的とした。研究期間を通して、帝京大学医学部附属病院、東京大学医学部附属病院、および関連病院の通院患者を中心に、その家族にも協力を求め、血液試料の提供を受けることにより、多発家系、孤発例の家系、一卵性双生児不一致例についてDNAサンプルの蓄積を図ると共に、既に帝京大学医学部附属病院および東京大学医学部附属病院で保有している家系サンプルについての解析を行った。統合失調症の一卵性双生児不一致例について行った、リンパ芽球を用いたマイクロアレイによるDNA発現解析の結果からは、有力な候補遺伝子が同定された。一方、DNAメチル化解析の結果では、2組の一卵性双生児不一致例についてペアないで有意差を認めるマイクロアレイ上のプローブは存在せず、有力な候補遺伝子の同定にまでは至らなかった。トゥレット障害のエクソーム解析については、健常データとの解析から有力な候補遺伝子が同定され、サンプルを追加した上で変異の存在および意義についての確認を行った。
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