研究課題
脳由来神経栄養因子は神経可塑性(BDNF)に関与するkey moleculeである。BDNFは血液脳関門を通過する。うつ病では血小板および脳内からのBDNF分泌が低下しており、健常者と比較して有意に血中(血漿・血清)BDNF濃度が低値である。BDNFはその前駆物質であるproBDNFから合成されるが、proBDNFも生理活性を有する。すなわち、BDNFがTrkB受容体に結合してシナプス可塑性に関与するのに対して、proBDNFはP75受容体に結合して神経細胞死(アポトーシス)に関与する。すなわち、BDNFとproBDNFは神経に対して全く逆の作用をする(Yin-Yan Hypothesis)。以上のことから考えると、うつ病では血中BDNFが低下、proBDNFが増加している可能性がある。本研究では、うつ病患者のproBDNF, BDNFの血清濃度を比較した。さらに、選択的セロトニン阻害薬(SSRI)(フルボキサミン・パロキセチン・セルトラリン)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(ミルナシプラン・ジュロキセチン)治療のそれらへの影響も検討した。さらに、本研究の独創的な点はうつ病寛解後復職群と未復職群間でこれらのパラメーターに相違があるかの有無を検討している点である。もし、勤労者の復職に関連するバイオマーカーが見つかれば、復職の科学的指標として使えるし、勤労者のメンタルヘルスモニタリングにも有効なツールとなることは間違いない。
2: おおむね順調に進展している
現在まで、大うつ病患者約200例をenrolledした。そして血液サンプルや臨床症状ならびにdemographic detaのcollectionも終了している。さらに大うつ病症例を蓄積する予定。
1)血液サンプルからのBDNF, proBDNF, MMP-9の測定を行う。2)臨床症状や反応・寛解との関連を検討する。3)BDNF, proBDNF, MMP-9の変動と抑うつ症状の再燃・再発との関連を検討する。現在は、復職群と未復職群間の検討をしている。
本研究はすでに予備研究を開始していた為今年度の執行額が少なかった。
今年度は学会参加旅費、解析用パソコン購入、MAGPIX血中濃度測定キット等に使用予定、特にMAGPIXのランニングコストが高額である
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