研究実績の概要 |
血清BDNFや血清IL6が大うつ病で変化するという研究は国外でのメタ解析で証明されている。BDNFやIL6は大うつ病のstate markerである。大うつ病患者を長期follow upしてBDNFやIL6の変化を観察した研究は国内・国外ともにない。したがって、我々は、ストレスとの関連が予測される血中BDNF濃度・IL6濃度およびBDNF遺伝子のメチル化を縦断的に観察した研究を実施した。本研究の予備研究1として、(A)抗うつ薬であるフルボキサミンとBDNF, proBDNF, IL6血清濃度との関連を検討した。その結果は以下の通りであった。。(1)大うつ病患者の血清IL6は健常者と比較して有意に高値を示した。(2)うつ病の重症度と血清IL6濃度は正の相関を示した。(3)大うつ病群は健常者群より血清BDNFが低下していた。(4)うつ病の重症度と血清BDNF濃度には負の相関があった。(5)血清proBDNF濃度に関しては両群に差はなかった。(6)フルボキサミンは血清IL6濃度を低下させた。(7)フルボキサミンは血清BDNFを増加させた。本研究の予備研究2として、大うつ病寛解患者の1年予後と血清BDNF濃度との関連検討した。その結果は以下のとおり。(1)寛解時の血清BDNFは再発群と非再発群には差が無かった。(2)再発3週間前の血清BDNF値は非再発群と比べて有意に低置であった。主要研究として、我々は、寛解後の大うつ病患者を対象として6ヶ月後までの再発に関してBDNF, IL6血清値を追跡した。その結果は以下の通りであった。(1)6ヶ月以内での再発群は非再発群と比較して3ヶ月後のBDNF濃度が有意に低値であった。(2)3ヶ月後のBDNF濃度はIL6の血清値は再発群で有意に高値を示していた。(3)血清proBDNF濃度に関しては、再発群と非再発群には差が認められなかった。
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