研究課題/領域番号 |
26461730
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
斎藤 顕宜 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (00366832)
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研究分担者 |
山田 美佐 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 科研費研究員 (10384182)
関口 正幸 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 室長 (80260339)
岡 淳一郎 東京理科大学, 薬学部, 教授 (40134613)
山田 光彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 部長 (60240040)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 行動薬理 / オピオイドδ受容体 / 抗不安様作用 |
研究実績の概要 |
これまでに、動物モデルを用いた検討から、全身投与されたオピオイドδ受容体(DOR)作動薬KNT-127が、オープンフィールド(OF)試験において、抗不安様作用を示すことを明らかにした。しかしながら、その作用機序については十分に検討されてこなかった。一方、電位依存性Na+チャンネル活性化薬ベラトリンを内側前頭前野前辺縁皮質領域(PL-PFC)に局所灌流させたマウスが、細胞外グルタミン酸濃度の有意な増加と不安様行動を示すことを報告している。 そこで本研究課題では、全身投与されたKNT-127が示す抗不安様作用の機序を明らかとするために、PL-PFCにおけるベラトリン誘発グルタミン酸神経伝達の亢進とそれに伴う不安様行動の発現に対するKNT-127の影響について検討した。 PL-PFCにベラトリン(100 uM)を灌流させたマウスは、細胞外グルタミン酸濃度の有意な増加と、OF試験における中心部への滞在時間率および移動距離率の有意な減少を示した。興味深いことに、KNT-127(30 uM)を併用させると、ベラトリンで認められたグルタミン酸濃度の増加とそれに伴う不安様行動は完全に抑制された。以上のことから、KNT-127は、PL-PFCの過剰なグルタミン酸神経伝達を制御し抗不安様作用を示すことが示唆された。一方、KNT-127(30 uM)を灌流させたマウスは、OF試験において情動行動へ影響を示さなかったものの、逆に、細胞外グルタミン酸濃度を有意に上昇させた。以上の結果から、DORを介するグルタミン酸神経系の制御はグルタミン酸神経系の興奮状態に依存する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の計画では、DOR 作動薬のグルタミン酸放出抑制作用の機序を検討する予定として、①細胞外グルタミン酸濃度をモニターしながらDOR 作動薬(KNT-127)と各種拮抗薬(GABAa 受容体拮抗薬、グリア型グルタミン酸取込阻害薬)による影響を解析する、②DOR との組織内分布についても明らかにする、ことを計画していた。しかしながら、DOR 作動薬によるグルタミン酸放出抑制作用が、予想と反して、グルタミン酸神経の状態に依存した調節をしていることが明らかとなった。興味深いことにDOR 作動薬(KNT-127)は、グルタミン酸神経系の過活動時(細胞外グルタミン酸濃度が上昇している時)には、抑制性に調節するのに対し、非過活動時は、興奮性に調節している可能性が示唆された。 そこで次に、上記で認められたDOR による状態依存的な調節機序が、他のモデルでも同様に認められるか検証することとした。内側前頭前野のグルタミン酸神経系が過活動性を示し、同時に不安様行動を示す動物モデルに嗅球摘出モデルがある。そこで、嗅球摘出モデルを用いて、DOR 作動薬の細胞外グルタミン酸濃度に及ぼす影響について検討する予定である。すでに、本モデルの作成は開始した。来年度(27年度)では、このモデルを用いて、当初予定していたGABAa受容体等の関与について検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では、評価モデルを嗅球摘出ラットで行うことに変更した。嗅球摘出ラットモデルは、作成に手間と時間がかかることが課題である。その課題を克服するために、より効率のいいモデル作成を行う必要がある。その解決する手段として、①飼育環境スペースの拡充、②実験設備の拡充、③手間のかからない他のモデルでの検討、を考えている。①項については、すでに対応し、飼育環境を倍増させた。②項については、新たにサンプル回収装置を導入し、1日対応サンプル数を倍増する予定にしている。また③項については、バックアップモデルとして学習性無力モデル等を計画に考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
評価試験の変更に伴い、使用予定であったマイクロダイヤリシス関連消耗品および動物の購入利用が当初予定より減額したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度使用予定である動物およびマイクロダイヤリシス関連消耗品の購入に充てる予定である。
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