研究課題
本研究では、DOR作動薬の情動調節機序を明らかとするためPL-PFCにveratrineまたはGluトランスポーター阻害薬であるTFB-TBOAを灌流した薬理学的不安惹起モデルを用い、不安様行動の発現に対するδオピオイド受容体(DOR)作動薬KNT-127の影響について検討した。PL-PFCにveratrineを灌流したマウスは、細胞外Glu濃度の有意な増加と、オープンフィールド(OF)試験における不安様行動の増加を示した。一方、KNT-127を併用すると、veratrineによって増加した細胞外Glu濃度は用量依存的に減少した。このとき、veratrineによって誘発された不安様行動は、KNT-127の併用により有意に回復した。興味深いことに、ベラトリン灌流で認められた扁桃体各亜核におけるc-Fos陽性細胞数の有意な増加は、KNT-127の併用により消失した。次にPL-PFCにTFB-TBOAを灌流したところ、veratrineを灌流した場合と同様に、細胞外Glu濃度の有意な増加とOF試験における不安様行動の増加を示した。一方、KNT-127を併用してもTFB-TBOAによって増加した細胞外Glu濃度の増加は減少しなかった。このとき予想に反して、TFB-TBOAによって誘発された不安様行動は有意に回復した。さらにKNT-127の効果は、競合的DOR拮抗薬であるNTIで阻害された。以上の検討から、PL-PFCにおけるKNT-127の抗不安様作用機序に細胞外Glu濃度を減少させる可能性、およびPL-PFCの神経細胞に直接作用する可能性が示唆された。KNT-127のDORを介した情動調節機序をさらに詳しく解析することで、新規抗不安薬の開発につながることが期待される。
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Behav Brain Res.
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