研究実績の概要 |
本研究は、統合失調症、うつ病など精神疾患の脳脊髄液(CSF)中miRNAマーカーを開発することが目的である。前年度はCSFマイクロアレイデータの統計解析により193分子を選択し特許申請した。それらのマーカー候補を定量PCRにより検証することを目指していたが、CSF中のmiRNA濃度が極めて低いため既存のリアルタイムPCRでは十分な感度・定量性が確保できなかった。本年度は、施設に新たに導入されたデジタルPCRによる検証を目指していた。デジタルPCRはメーカーのトレーニングと技術指導を受けつつ実施した。7つのプローブ(RNU44, 48, miR-24, 659, 4484, 4515, 4749)について条件検討を行い、少なくとも4プローブについて測定可能となったが、1000 copy以下では定量性が不十分であることも判明した。また、10種のプローブの解析により、リアルタイムPCRのCT値と、マイクロアレイの蛍光強度との間には関連が認められ、デジタルPCRの1000copyはアレイの約400RFUに相当することが判明した。そこで、昨年度のアレイの解析結果より平均蛍光強度が400RFU以上の分子40を、再現確認可能性の高いマーカーとして再選択した。 また、感度の向上と背反するが、マーカーの機能的な意義を考えるうえでは近年、ガンやアルツハイマー病で最近研究が進んでいるextracellular vesicles (EVs)に含まれるmiRNAを測定することも重要であると考え、CSFにおけるEVs由来のmiRNAを測定する系の開発も試みた。主要三社(Q社、I社、S社)のキットを用いたところいずれも類似した結果(3種のプローブで測定)を得られたが、Q社が優れていいた。また全miRNAのうちEVs由来が10-30%以上と高率を占めていることも予備的に判明した。
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