研究課題
大部分の認知症性疾患においては、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43などの蛋白質が細胞内に凝集蓄積する。蓄積蛋白には、リン酸化および断片化が生じている。本研究の目的は、各々の疾患に本質的な蛋白質の異常分子種を明らかにし、蓄積蛋白の生化学的特徴に基づいた分子病理診断法を確立するとともに、これらの分子種をマウス脳に接種することでよりヒト疾患の病態に近いモデル動物を作成することである。今年度の目標は、剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析により、疾患の臨床病型および病理構造と蓄積蛋白の生化学的特徴との対応を明らかにすることとした。まず長期に経過し、白質変性が高度であった皮質基底核変性症の大脳皮質および白質に蓄積したタウの生化学的性状を調べ、皮質・白質ともに4リピートタウが蓄積し、そのC末端側断片のパターンも同じであることを明らかにした。次いで、神経原線維変化型認知症の側坐核に高密度のタウ蓄積が生じることを明らかにするとともに、その生化学的特徴は6種類のアイソフォームから構成されアルツハイマー病の神経原線維変化と同様の性状であることを明らかにした。さらに、TDP-43の脳内蓄積を呈する家族性前頭側頭型認知症の原因遺伝子の一つであるグラニュリンのノックアウトマウス脳において、タウのリン酸化が亢進していることを突き止め、グラニュリン変異例においてTDP-43だけでなくタウの異常も生じる可能性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標は、剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析により、認知症性疾患の臨床病型および病理構造と蓄積蛋白の生化学的特徴との対応を明らかにすることである。皮質基底核変性症において、細胞の構成が異なる大脳皮質と白質において蓄積タウのアイソフォームのみならずC末端側断片のパターンも共通であること、神経原線維変化型認知症の側坐核において、海馬と同様にアルツハイマー病型の6種類のアイソフォーム構成が認められること、TDP-43との関連しかこれまで論じられなかったグラニュリン変異例においてタウの異常が生じる可能性があることなどを初めて明らかにしたことなどから、今年度の目標には到達したと考えられる。
疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析を継続して行うとともに、異常蛋白分子種の接種によるモデル動物作成を試みる。
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