研究課題
大部分の認知症性疾患においては、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43などの蛋白質が細胞内に凝集蓄積する。蓄積蛋白にはリン酸化および断片化が生じている。本研究の目的は、各々の疾患に本質的な蛋白質の異常分子種を明らかにし、蓄積蛋白の生化学的特徴に基づいた分子病理診断法を確立するとともに、ヒト疾患の病態に近いモデル動物を作成することである。今年度の目標は、分子診断法の確立のために、各タウオパチーにおける疾患の本質を示す異常タウ分子種を明らかにすることとした。アルツハイマー病(10例)、ピック病(5例)、進行性核上性麻痺(9例)、皮質基底核変性症(8例)の患者剖検脳から抽出したサルコシル不溶性タウをトリプシンで処理後、免疫ブロットにて解析したところ、トリプシン耐性タウのバンドパターンは、疾患ごとに異なったパターンを示したことから、不溶性タウ線維のコアの構造が疾患によって異なることが示唆された。トリプシンによる切断部位が疾患によって異なることは、質量分析により証明された。これらの結果は、タウオパチーにおいて、プリオン病と同様に、プロテアーゼ耐性タウの生化学解析によって分子病理診断が可能であることを示唆するとともに、疾患特異的なタウ線維の形成機序を明らかにすることがタウオパチーの病態解明につながると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標での一つである剖検脳を用いた病理生化学解析では、プロテアーゼ耐性タウの解析により、異常タウの構造の特異性が疾患特異的な病理像形成と関連することを明らかにし、タウオパチーとプリオン病と病態の類似性について解明した点で意義深い。さらに、昨年度GRN遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウス脳の病理生化学解析により、タウのリン酸化亢進を明らかにしたが、その結果に基づいたGRN変異を有するヒト剖検脳の解析に着手し、従来指摘されていたTDP-43だけでなくリン酸化タウの蓄積が生じていることを明らかにしつつある。以上から、研究はおおむね順調に進展している。
疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析を継続して行う。さらに、異常蛋白の細胞間伝播による病理進展機序の解明およびモデル動物作成を試みる。
次年度に疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析をさらに行うこととしたため。
繰越した費用を使用して、疾患患者剖検脳および遺伝子改変マウス脳の病理生化学的解析により、認知症性疾患の臨床病型および病理構造と蓄積蛋白の生化学的特長との対応を明らかにする。
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