研究課題
認知症性疾患の大部分では、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43などの蛋白質が細胞内に凝集蓄積する。本研究の目的は、蓄積蛋白の生化学的特徴に基づいた分子病理診断法を確立するとともに、ヒト疾患の病態に近いモデル動物を作成することである。平成26年度、GRN遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウス脳を病理生化学に解析し、タウのリン酸化が亢進するという結果を得た。そこで、今年度はGRN変異を有するヒト剖検脳の解析を行った。脳組織は、Banner Sun Health Research Institute(アメリカ)から供与された4例とUniversity of Manchester(イギリス)から供与された9例である。前者は、凍結切片を用いた免疫組織化学染色および凍結脳の生化学的解析を、後者はパラフィン切片を用いた免疫組織化学染色を行った。前者の4例では、1例が神経細胞およびグリア細胞内の広汎なタウ蓄積、1例はα-シヌクレイン陽性構造のびまん性出現、1例はアルツハイマー病と同等のアミロイドβ蛋白およびタウの蓄積、1例はBraak III-IV程度のタウ蓄積という結果であり、4例中3例は異常蛋白蓄積を呈していた。生化学的にも、サルコシル不溶性画分に不溶性タウあるいは不溶性α-シヌクレインが検出された。一方、後者のパラフィン切片での検討では、蛋白蓄積について対照群と有意な差は認めらなかった。GRN変異はこれまでタウ陰性とされてきたが、若年例でタウやα-シヌクレインの高度蓄積例があることが分かった。以上から、GRN変異は、TDP-43だけでなく、タウおよびα-シヌクレインの蓄積も促進する可能性がある。ただし、蓄積の程度はパラフィン切片で差を検出できるほど強いものではないかもしれない。今後、GRN変異例について、高感度の免疫染色や凍結脳の生化学的手法での再検討が必要と思われた。
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