本研究では、簡便かつ非侵襲的に繰り返し脳機能を測定できるという近赤外線スペクトロスコピィNIRSの特色を活かして、パニック障害に対する認知行動療法の脳機能への影響を経時的に評価し、治療効果の判定に有効なbiomarkerを確立することを目指した。 平成28年度は、前年度に引き続き、パニック障害の治療効果判定に感度のあるbiomarkerを確立するため、パニック障害を対象として計10セッションの通常のCBTを行い、治療導入前・治療中(4週毎)・治療直後・治療終了後3か月の時点で、症状評価・治療に対するモチベーションの評価・言語流暢性課題を用いたNIRS測定を行うこととした。また、各時点におけるNIRSデータと治療経過中のパニック症状の変化との関係について解析を行い、治療効果判定に有用なbiomarkerを決定し、それを即時に患者へフィードバックするためのシステムを確立する予定とした。 以上の計画に基づき、当院外来にてパニック障害のCBTを行い、平成29年3月までに計9例が終結した。さらに1例が施行中であった。これらを通してCBTの治療者を増やす取り組みも行った。 最初の8例のCBT前後のNIRSデータについて、酸素化ヘモグロビン濃度の変化を時間クラスター解析したところ、右上側頭回および下前頭回付近で賦活量が有意に増加していた。この成果を平成28年11月に開催された第46回日本臨床神経生理学会学術大会にて報告した。
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