研究課題
2015年度は、昨年度解析を行った3施設(富山大学、東邦大学、東北大学)のデータに加え、東京大学で撮像されたMRIデータの解析を行った。これまでにMRI撮像、臨床評価を終えている被験者は現時点でARMS群104名と健常者106名である。①FreeSurferを用いたlocal gyrification index (LGI) 解析-2015年度は大脳皮質の折りたたみの度合いの指標であるLGIを全脳レベルで計測し、2群(ARMSと健常者)もしくは3群(ARMS移行群、ARMS非移行群、健常者)で比較を行った。ARMS群と健常者の比較では、右半球を中心にARMS群で広範囲な部位にLGIの増大を認めた。ARMS群の精神病をのちに発症した群(ARMS-C)と発症しなかった群(ARMS-NC)の比較では、ARMS-C群で左の後頭葉にLGIの増大を認めた。②Labeled cortical distance mapping (LCDM)を用いた局所解析‐Johns Hopkins 大学のTilak Ratnanather准教授の協力のもと、2014年8月に研究代表者が解析を行い、前部帯状回(ACG)のデータが2015年度にまとまった。ARMS‐C群、ARMS-NC群、健常者の3群比較では、ARMS-C群において健常者と比較して左ACGの皮質厚の菲薄化を有意に認め、またARMS-C群・ARMS-NC群で共通して健常者に比べて左ACGの表面積が増大していることを見出した。このように、全脳解析、局所解析ともにARMS-C群とARMS-NC群で脳形態の変化が見られ(左後頭葉のLGI値のARMS-C群における増大、左ACGの皮質厚のARMS-C群における減少)、これらが精神病発症のマーカーとして利用できる可能性が示された。局所解析の所見は、原著論文として現在国際誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
ARMS群で精神病に移行した群における特異的な所見が複数見いだされ、その所見をまとめた論文の投稿まで研究は進んでいる。
本研究の主たる目的はARMSから精神病性障害への移行に関連する脳形態変化の同定であり、すでに複数の関連した変化が見いだされている。今後は、より頑健な結果を得るべくさらに被験者のリクルートを行う予定である。
解析用のコンピュータの新規購入をしなかった。消耗品を購入しなかった。
解析用コンピュータを購入する予定。
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