研究課題
最終年度の成果として、精神病性障害の発症危険群であるat-risk mental state (ARMS) 群では統合失調症群と同程度の嗅覚機能障害を呈し、その程度が認知機能障害や陰性症状の程度とも相関することを見出した。また脳画像解析研究において、神経発達障害の程度がより強いと想定される臨床亜型である欠陥型統合失調症群で嗅溝の浅化が特に顕著であることを見出した。さらにARMS群では健常群と比較して眼窩溝数の減少、帯状回皮質の菲薄化、脳溝指数の上昇といった神経発達障害を示唆する脳形態変化が認められた。研究期間全体を通して、後に精神病に移行するARMS群で特に嗅溝が浅いこと、統合失調症スペクトラムに属するが比較的軽症である統合失調型障害群では嗅溝の変化が比較的軽度であること、双極性障害やうつ病でも嗅溝の浅化所見を認めること等を報告してきた。また精神疾患で認められる嗅覚機能障害は脆弱性に関する比較的固定的な所見と考えられるが、健常群においても精神状態(状態不安など)の影響を受けることがわかった。これらの結果から、ARMS群や統合失調症群では嗅覚関連脳構造(主に嗅溝の深さ)が他の粗大な脳形態特徴(脳溝脳回パターンなど)と同様に精神病性障害圏における神経発達マーカーとして極めて有用であることが示唆された。また嗅覚機能も同様に精神病性障害における比較的固定的な生物学的マーカーとしての役割が示唆された。これらの所見の疾患特異性に関してはさらなる検討が必要と思われた。なお予備的な解析において、統合失調症群では嗅覚機能と眼窩前頭皮質の皮質厚の間に有意な相関を認めており、嗅覚機能と脳形態の関連について今後より詳細な解析が望まれる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci
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