研究課題/領域番号 |
26461747
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森原 剛史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90403196)
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研究分担者 |
武田 雅俊 藍野大学, 公私立大学の部局等, その他 (00179649)
田中 稔久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 網羅的解析 / モデル動物 / 疾患修飾遺伝子 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の中心病理であるAβ病理を規定する遺伝子産物KLC1vEを同定しているが(Morihara PNAS 2014)、以下の関連する重要事項を当該年度に明らかにした。 KLC1は多数のスプライシングバリアントがあるがヴァリアントE以外にAからDおよびHについても発現パターンをマウスとヒト脳およにヒト神経系培養細胞で検討した。KLC1vE発現量が低いとAβ産生量が低値になることが再現性よく示された。一方その他のバリアントではAβ産生量でもAβ蓄積量でもこのような関係は認められなかった。今回解析中に予想外の重要な発見があり、本研究から新たな研究が開始された。ヒトGWAS研究で同定されたアルツハイマー病のリスク遺伝子と、本研究を結ぶ発見であり、この事実を基にこれまで困難であった孤発性アルツハイマー病の発症分子メカニズムにせまりつつある。 我々のマウストランスクリプトミクスデーターと共同研究者のヒトGWASの統合解析は予定通り進んでおり、論文を書き始めている。多重検定後も有意な候補遺伝子を同定することができた。 ヒト末梢血の解析もすすんでいる。阪大精神科における臨床検体の収集は継続している。精緻な測定のための測定系や検体管理の改良にも着手した。PNAS 2014で報告した末梢血中でKLC1vEがアルツハイマー病で高値であることを新たに収集した臨床検体で再現できた。これらの結果を基にアルツハイマー病のバイオマーカー開発という新たな研究の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
孤発性アルツハイマー病の関連遺伝子を独自の方法で同定、解析するというのが元々の目標だった。これ自体大変困難な目標であるが、我々はさらに次の段階に進む基盤となる結果も得ることができ、実際新たな研究の準備が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を継続しながら、新たな研究も必要に応じて新たな研究資金を得ながらスタートすることを準備している。継続事項としては臨床検体の収集、KLC1の各スプライスバリアントの機能解析である。新たな研究としてはGWASで同定されたアルツハイマーリスク遺伝子も基盤としたヒトゲノムからKLC1vEそしてAβ病理につながる新たな病理パスウエイの解明である。もうひとつは血液バイオマーカーの開発である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進んでいる。測定系の構築等もスムーズであり、再現性や信頼性の高い結果がえられている。そのため予定より少ない実験で早く完成できた。
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次年度使用額の使用計画 |
順調に進んだ培養細胞実験での結果を確認するため、マウス繁殖、in vivoの実験を本格化させる。マウスを加齢させる必要があるため飼育の負担も大きく、費用も掛かる実験である。これらは予定していた実験であるが、研究費の減額のため実行の困難が予想されていた実験でもある。
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