研究課題
昨今、精神科臨床では、認知行動療法(CBT)に大きな関心が集まってきている。心理学的視点から作用機序の説明を試みた研究は多いが、神経科学的機序は解明されていない。脳内のどのような機序を介してCBTが効果発現に至るかを解明することは、医学的な治療としてCBTを臨床に用いる際に必要不可欠と考えられる。本研究の目的は、CBTの脳機能画像研究手法を用いてCBTの神経科学的基盤を解明することにある。様々なレベルの社会不安をもつ健常者を対象として、社会的排斥による苦痛と情動的サポートによる苦痛の軽減に社交不安がどのように関連するかを、社会的排斥や情動的サポートに対する反応をみるサイバーボール課題を用いて脳機能画像手法により検討した結果、高い社交不安はサポート時の社会的苦痛の軽減に関連し、社交不安が高い者ほど他者からの好意的なメッセージを認識する能力も高いこと、社交不安が高い者は日常生活で経験する不安を他者からの肯定的評価と認知制御を用いてコントロールしている可能性が示唆された。また、健常者を対象に電気疼痛刺激予期不安課題を用いて、認知的再評価により予期不安を軽減できるかを検討した。その結果、情動に関連して扁桃体や視床を含む辺縁系の活動、認知的制御に関連して前頭前野や前帯状皮質の活動が認められ、特に前帯状皮質や眼窩前頭皮質の活動は不安の制御と負の相関を示した。すなわち、健常者において認知的制御による予期不安軽減の脳内機構を明らかにした。うつ症状を有する対象にCBTの介入群と統制群を用いた無作為化比較試験を行い、介入前後の脳活動の変化を測定した。その結果、うつ症状を有する対象においてCBTにより罰予期時の腹外側前頭前野の感情制御に関わる活動が回復すること、ポジティブなメタ認知に関連した背内側前頭前野の活動増強と抑うつ症状の改善することを明らかにした。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Psychological Medicine
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