現在の日本は超高齢社会となっており問題点として増加することが予測されているのは認知症患者数である。家庭での生活が困難となる理由として最も多いいのが幻覚、妄想、興奮、徘徊といった精神症状及び行動上の問題が出現して対応ができなくなることである。このため如何に早く患者の症状を察知し対応できるかが大きな問題となる。これまでは症状が出現してきた後に対応を考えることになってしまっていたが、生体内のバイオマーカーがその一つの指標になれば定期的に測定し、悪化指標の一つになれば有益ではないかと考えて今回の研究を施行した。今回は当院精神科外来にて通院加療を行なっている認知症患者9名について、通常の診療下においてそれぞれ1年間臨床症状とその経過を観察し認知機能(Mini-Mental State Examination)、BPSD症状(Neuro Psychiatric Inventry)変化の観察及びその介護者における介護うつの度合いと介護負担度について評価を行なった。またそれぞれの患者においては3ヶ月ごとに1日4回唾液採取を行い、唾液中のコルチゾール、メラトニンの量を測定した。結果:認知機能は進行性に悪化傾向を示した。介護負担、介護うつの傾向はBPSDの症状悪化により上昇する傾向にあった。症例中には認知症の進行の経過に伴い精神症状、問題行動も悪化するものが認められた。症状悪化に伴い薬剤の変更を行うものもあった。精神症状、問題行動など、それらBPSDの変化は生体内のストレスホルモンとされる各ホルモン値の変化に影響を与えていた症例が存在した。今後将来的にはBPSD症状変化を予測する指標の一つにこれらホルモン値の変化が利用できる可能性が考えられた。
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