研究課題/領域番号 |
26461757
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
桐野 衛二 順天堂大学, 医学部, 教授 (90276460)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | functional connectivity / default mode network / salience network / sLORETA / schizophrenia / EEG / 同時計測 / fMRI |
研究実績の概要 |
本年度は投稿失調症について第20回日本薬物脳波学会において以下の内容で発表した。 【目的】今回我々は統合失調症患者におけるFCをrs-fMRIと脳波の同時計測を用いて検討した。我々は特に皮質線条体ネットワークに焦点を当て、尾状核を中心に解析した。 【対象と方法】統合失調法患者20名と年齢性別をマッチさせた健常対照群20名に対しresting-state functional MRI (rs-fMRI)および同時脳波記録を行った。今回は特に皮質線条体ネットワーク(cortico-striatal network)に焦点を当てたため、尾状核をseedとして解析した。脳波記録はVision RecorderⓇを用い記録した。アーチファクト除去後の波形より、各帯域oscillationのlocalization解析およびdefault mode network間のconnectivityをsLORETAを用いて評価した。 【結果】患者群は尾状核と、楔前部を含む後頭領域、中および下側頭回、後部帯状回との間のFCが対照群と比較して有意に亢進していた。健常対照群では尾状核をseedとしたFCにおいて負の結合を示したのに対し、患者では負の結合が消滅していたため群間比較では、有意差が見られたものと考えられた。sLORETAにおいて患者群は健常群と比べて帯状回のoscillationが増強している傾向を認めたが、統計学的に有意差は認めなかった。帯状回のoscillationの亢進傾向はrs-fMRIの結果を支持するものと考えられる。 【考察】今回我々の得た統合失調症患者における尾状核を起点とするFCの亢進という所見は、統合失調症の病態仮説の中の皮質線条体ネットワーク仮説やネットワーク間分離不全仮説に対して根拠を付与するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度までに、健常対象においてOff-lineデータ処理を確立した。今年度は、統合失調症と自閉症スペクトラム障害患者において検討し、一定の結果を得られ、学会発表・論文投稿も果たせた。fMRIの解析は、CONNというソフトウエアを用いて、定量的に解析が可能となり、結果のビジュアル化もより洗練されたものとなった。脳波解析もsLORETAを用いて統計学的な検証がより信頼性の高いものとなった。症例数も順調に増えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後対象症例を拡げ、臨床症状評価との相関も検討する必要がある。また現在の統合失調症とおよび自閉症スペクトラム障害患者のサンプルサイズは小さく、より大きなサンプルとして、結果の信頼性を向上する必要がある。脳波の解析方法についても、sLORETAを用いてより洗練されて方法を模索する必要がある。さらにsLOREAにおいてはサンプルサイズの小ささを補うために、多施設によるデータベースとの比較も検討したい。 また拡散テンソルイメージングとの関連についても更なる検討が必要である。従来の形態学的評価のみのMRI検査では、精神疾患の病態解明には不十分であった。近年、Diffusion tensor imaging(DTI)より新たな拡散MRI解析手法が数多く提案されている。水分子拡散の正規分布モデルを仮定するDTIでは、実際の複雑な生体組織構造を完全に推定するには限界がある。そのため、DTIの限界を乗り越えるべく、diffusional kurtosis imaging(DKI)、Neurite Orientation Dispersion and Density Imaging(NODDI)など新たな拡散MRIの解析法が提案されている。これらの技術は精神疾患の研究へも応用され、その有用性が報告されている。 今後我々は、DKI・NODDI・rs-fMRIを用いて、精神疾患の病態解明を試みる。また、継時的観察によって、予後予測への援用も検討する。さらに、他の生物学的マーカーとの関連を検討する。
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